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吉田輝星、自分らしさを追究せよ。悔い残るマーティンとの勝負【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#144】

先発陣が足りていない状況でチャンスを与えられ、どのような投球をするのか期待された吉田輝星。今季初登板は、2イニングで7失点(自責点2)という結果に終わった。

2021/04/04

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吉田らしさを出してほしい

 ロッテ戦中継(GAORA)の解説でガンちゃんこと岩本勉氏が怒っていた。1回表、1死取って2番マーティンをストレートの四球で歩かせたのだが、「マーティンへの四球がすべて」と吐き捨てる。
 
 ガンちゃんが言ってるのは「なぜ全力で勝負を挑まないか?」ということだ。正直に言おう。田中将大が二木康太になったからって、こっちは負け覚悟だよ。勝ち目は薄いと思っている。そりゃそうだろう、相手はロッテの開幕投手だよ。
 
 負けたって別にいいんだ。吉田輝星にはそれだけの価値があるんだ。但し、勝負してもらいたい。挑んで打ち込まれるなら、ショックはショックだけど得るものがある。が、1回の輝星は大緊張してマウンドに立ち、最初の荻野真司を2ゴロに打ち取った後、余計なことを考えた。マーティンをかわしにかかろうとして、制球を乱し、そのまま修正できず四球だ。ガンちゃんはしきりに「らしさを出してほしい」と言っていた。打たれてもいいからいちばん自信のあるまっすぐで挑んでほしかったのだ。
 
 マーティンを歩かせ、中村奨吾にセンターに弾き返されてからは混乱と焦りだ。頭がまとまらないまま投げ、失点する。
 
 僕は昔、1軍に挑戦してた頃の森本稀哲を思い出した。守備固めのついでに1打席もらってさっぱり打てなかった頃だ。悩んでいた。あの頃のひちょりは1軍のピッチャーに位負けしていた。頭がまとまらず、全部の球を追いかけてキリキリ舞いしていた。この段階の選手はそんなに多くを考える必要がない。
 
 やれることだけやる。
 やれることだけきっちりやる。
 
 それでいい。例えばインコースがさっぱり打てないバッターがいたとして、1軍に上げてもらう前日眠れなくなる。「インコースが来たらどうしよう…」。読者の皆さん、どうすればいいと思いますか? これは簡単。インコースが来たらごめんなさいでいい。
 
 ひちょりは経験を積んで、打てる球だけ打つようになっていく。そして自信をつけて対応力が増していった。プロ野球の選手はみんなそうだ。吉田輝星はマーティンに挑むべきだった。挑んで通じる球があれば自信になる。挑んで打たれたらごめんなさいだ。まだその段階。
 
 といって僕はぜんぜん悲観していないのだ。2回、先頭打者の振り逃げに始まって、エラーがらみで崩された。バックがしっかりアウトを取ってやれば立ち直ったかもしれない。何しろ自責点2だ。
 
 輝星は自分に足りないものが分かったと思う。力をつけてほしい。僕はこれからも鎌ケ谷に見に行くつもりだ。

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