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現役選手なら吉川尚輝や藤原恭大。「バントの神様」が語る、理想の2番打者像

プロ野球春季キャンプが2月1日から、宮崎と沖縄で一斉に開始する。阪神タイガースでは、元巨人・中日で現在は評論家としても活躍する“バントの神様”川相昌弘氏が臨時コーチを務めることで話題となっている。読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズで過ごした現役生活は24年間。通算犠打数533は、いまも破られていない世界記録――。1990年代の巨人で不動の2番ショートとして活躍し、巨人、中日で二軍監督、三軍監督、一軍ヘッドコーチなども歴任した「バントの神様」が、現代野球界における理想の2番打者像を語ってくれた。<12月28日初掲載>

2021/01/30

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バントも、相手にプレッシャーを与える選択肢のひとつ

 
 その意味では「バント」の在り方も、以前とは少し変わってきています。近年ではバントについて「相手にわざわざアウトをひとつ献上する」というようなネガティブな表現を見ることもありますが、私はそうは思いません。
 
 たしかにアウトひとつを与えてしまう作戦ではありますが、それと引き換えに相手に大きなプレッシャーを与えることもできる。
 
 極端な話、ヒッティングでも相手にアウトを与えてしまうリスクはあります。野球の場合、どんなに優秀な打者でも6割以上は凡打に終わる。ゴロならダブルプレーになる可能性もあるし、フライアウトなら走者を進めることもできない。
 
 3割前後の成功率にかけてヒッティングさせるのがいいのか、アウトひとつを与えてもより確実に走者を進めるのか――。
 
 局面によっては、バントで走者を確実に進めることも、重要な戦術のひとつになります。私が理想の2番打者に「なんでもやれる」タイプをあげるのも、それが理由です。
 
 ヒッティングでもバントでも、状況に応じてクリーンナップに「つなぐ」ことができる。そういう選手が、現代の野球界でもとめられる「2番打者像」ではないでしょうか。
 

書籍情報


 
【現役選手、指導者へ贈る野球 IQ 向上メソッド】
ベースボールインテリジェンス 実践と復習の反復で「頭を整理する」
(著者:川相昌弘(元読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ)/四六判/272頁/定価1700 円+税)2020年12月7日発売
 
【本人による実技写真解説】
通算犠打数533は世界記録。ゴールデングラブ賞6回受賞。プロ野球人生で書き綴ったノートを基に、技術論・指導論を体系化。平凡な私がプロで生き残れた理由がこの本に詰まっている。
 
「頭を整理して、グラウンドで戦えるか」。
 
教わったこと学んだことをイチ早く吸収していくには、一度言われたことをしっかりと覚えておかなければいけない。漠然と練習をしているだけでは、技術も上がらなければ、戦術の理解度も上がっていかない。ひとつひとつのプレーや動きに、どれだけ根拠を持つことができるか。良かったことも悪かったことも自分の言葉で説明できるようにならなければ、本当の意味で理解したとは言えない。理解がなければ、上達にはつながっていかない。
 
本書は、心/守備(基本)/守備(連携)/バント/打撃/走塁の6つの構成から成る。いずれも、野球ノートに記してきた技術論や精神論をもとに、各分野を極めるためのポイントを詳細に記した。
 
【目次】
第1章 心の持ち方
第2章 守備(基礎)編
第3章 守備(連携)編
第4章 犠打編
第5章 打撃編
第6章 走塁編
 
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BASEBALL INTELLIGENCE ベースボールインテリジェンス 実践
と復習の反復で「頭を整理する」

 
川相昌弘(かわい・まさひろ)
1964年9月27日、岡山県出身。岡山南高では投手としてチームをけん引、甲子園に春夏計2回出場した。1982年のドラフト会議で読売ジャイアンツから4位指名を受け、内野手として入団した。選手層の厚いチームにおいて、守備力とバントで存在感を示すと、藤田元司氏が監督に就任した1989年に、レギュラーを奪取。以降、ジャイアンツの2番・ショートとして中軸のつなぎ役として活躍した。2004年から巨人でも一緒にプレーした落合博満監督率いる中日ドラゴンズへ移籍、新天地でも貴重な戦力として重宝された。2006年に現役引退後は中日・巨人のコーチを歴任。現在は野球解説者を務めている。

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