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22歳の二塁手・山田哲人が大ブレイク セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2014年編~

2020/12/22

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DELTA・道作



2014年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
読売   144 .573 596 552  44
阪神   144 .524 599 614  -15
広島   144 .521 649 610  39
中日   144 .479 570 590  -20
DeNA   144 .472 568 624  -56
ヤクルト 144 .426 667 717  -50
 

 
 セ・リーグでは山田哲人(ヤクルト)が急成長を見せた。この年はトリプルスリーを記録する前のシーズンにあたる。打撃三冠タイトルの獲得がなかったため翌年ほどは目立っていないが、この時点ですでにリーグ最高のwRAAを叩き出した打者となっている。リーグ最多タイの二塁打39本など、二塁手としては珍しく長打力を発揮。.324の高打率に加え、四球も多く出塁率は.403に到達。死角のない首位であった。盗塁も15を記録している。

 2位には丸佳浩(広島)がランクイン。広島は前年に3位となったものの依然として勝率は5割を下回っていた。ただこの年は勝率.521を記録。低迷を脱したことを象徴するように丸が順位を上げてきている。この年の丸はリーグ最多の100四球をマークしたことが躍進のカギとなった。
 
 3位は前年に60本塁打の新記録を更新したウラディミール・バレンティン(ヤクルト)。この年は欠場が増えて112試合の出場。規定ぴったりの446打席の出場にとどまったことで、出場機会が多いほど有利になる積み上げ指標のwRAAでは丸、山田に及ばなかった。しかし出塁率.419、長打率.587は依然としてリーグ1位。わずか366打数で31本塁打を記録するなど長打力は健在で、wOBA.426は山田を上回る1位であった。
 
 この年は打撃3部門で1位となった選手が1人もwRAAランキングで 5位以内に入らない特徴的なシーズンとなっている。打率.338で首位打者を獲得したマット・マートン(阪神)は6位。109打点で打点王のマウロ・ゴメス(阪神)は7位。37本で本塁打王となったブラッド・エルドレッド(広島)は10位にとどまっている。エルドレッドは欠場が多かったほか、四球や二塁打といったスタッツが振るわなかったことで10位にとどまった。しかし広島勢は徐々に勢力を伸ばしてきており、丸を中心とした攻撃陣は優勝を争いうる陣容へと変化してきている。
 
 また大器と呼ばれていた筒香嘉智(DeNA)がベスト10に割り込んできている。この年はフル出場ではなかったため、打席が少なく、wRAAも8位にとどまったが、1打席当たりの貢献を示すwOBAではリーグ4位の.386と健闘している。
 
 ベスト10圏外の注目選手でも広島の菊池涼介を挙げる。守備で注目を浴びる機会の多い選手だがこの年は打撃も好調だった。シーズンフル出場で.325の高打率を記録。四球を選ばないスタイルながら出塁率も.352まで伸ばすなど、チャンスメイカーとして存在感を示した。
 
 この頃から、過去には閲覧できなかったセイバーメトリクスのスタッツ、例えばUZR(Ultimate Zone Rating)のような守備力評価スタッツもWeb上で得られるようになってきた。かつて、セイバーメトリクス好きといえばどちらかと言えば変人扱いされていた時代があったが、そんな時代が今から見れば遠く感じられる。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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