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「ラミレスのところに打球が飛んだら、ひとつ余分に塁を取れ」が巨人戦の合言葉。好走塁生み出す一塁コーチの存在

プロ野球春季キャンプが2月1日から、宮崎と沖縄で一斉に開始する。阪神タイガースでは、元巨人・中日で現在は評論家としても活躍する“バントの神様”川相昌弘氏が臨時コーチを務めることで話題となっている。今回は川相氏の著書『ベースボールインテリジェンス』から、12月14日に公開した技術論、指導論を再掲載する。同氏のコーチングを受けるつもりで一読すると、より深く野球を知るきっかけとなるかもしれない。

2021/01/29

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ランナーとコーチャーの共同作業で“狙う姿勢”を見せる

 ランナーの意識が問われるのが、外野に飛んだヒットのときのオーバーランだ。外野手が、少しでもファンブルしたときに、スピードを落とさずに二塁を狙うことができるかどうか。そのためには、外野手が捕球する瞬間を、自分の目で見ておかなければいけない。ランナーは「はじいたら、ゴー」ではなく、「はじけ、はじけ、よっしゃ、はじいた、ゴー!」と、次塁を狙うのが理想だ。すなわち、「次塁を狙うつもりで走り、行けなかったから止まる」。止まることが前提ではなく、行くことが前提にある。外野手がはじいてから、アクションを起こそうとしていては、瞬時の判断が遅くなる。
 
 こうしたミスを誘うのもランナーの力であり、足でどれだけプレッシャーをかけることができるか。「あのランナーは足が速い。ちょっとでもボールをはじけば、次塁を狙われる」と思わせることができれば、打球を捕る直前にランナーの動きを目で確認し、それが捕球ミスにつながることもあるわけだ。ミスを誘うには、常日頃からランナーとコーチャーの共同作業によって、〝狙う姿勢〞を見せておく必要がある。
 
なお、外野にヒットが出たあと、一塁コーチャーが細心の注意を払っておかなければいけないのが隠し球だ。ヒットを打ったあと、打者走者と一緒に喜んでいてはコーチャー失格。ボールの行方を必ず目で追い、ピッチャーにボールが戻るまで追い続ける。それでも、状況によっては見失うこともあるので、それを補うのがベンチの仕事になる。コーチも控えの選手も、1球のボールに集中しておく。子どもの頃から、「ボールから目を離すな!」とよく言われたと思うが、それはグラウンドでプレーしている選手だけの話ではない。
 

書籍情報


 
【現役選手、指導者へ贈る野球 IQ 向上メソッド】
ベースボールインテリジェンス 実践と復習の反復で「頭を整理する」
(著者:川相昌弘(元読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ)/四六判/272頁/定価1700 円+税)2020年12月7日発売
 
【本人による実技写真解説】
通算犠打数533は世界記録。ゴールデングラブ賞6回受賞。プロ野球人生で書き綴ったノートを基に、技術論・指導論を体系化。平凡な私がプロで生き残れた理由がこの本に詰まっている。
 
「頭を整理して、グラウンドで戦えるか」。
 
教わったこと学んだことをイチ早く吸収していくには、一度言われたことをしっかりと覚えておかなければいけない。漠然と練習をしているだけでは、技術も上がらなければ、戦術の理解度も上がっていかない。ひとつひとつのプレーや動きに、どれだけ根拠を持つことができるか。良かったことも悪かったことも自分の言葉で説明できるようにならなければ、本当の意味で理解したとは言えない。理解がなければ、上達にはつながっていかない。
 
本書は、心/守備(基本)/守備(連携)/バント/打撃/走塁の6つの構成から成る。いずれも、野球ノートに記してきた技術論や精神論をもとに、各分野を極めるためのポイントを詳細に記した。
 
【目次】
第1章 心の持ち方
第2章 守備(基礎)編
第3章 守備(連携)編
第4章 犠打編
第5章 打撃編
第6章 走塁編
 
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BASEBALL INTELLIGENCE ベースボールインテリジェンス 実践
と復習の反復で「頭を整理する」

 
川相昌弘(かわい・まさひろ)
1964年9月27日、岡山県出身。岡山南高では投手としてチームをけん引、甲子園に春夏計2回出場した。1982年のドラフト会議で読売ジャイアンツから4位指名を受け、内野手として入団した。選手層の厚いチームにおいて、守備力とバントで存在感を示すと、藤田元司氏が監督に就任した1989年に、レギュラーを奪取。以降、ジャイアンツの2番・ショートとして中軸のつなぎ役として活躍した。2004年から巨人でも一緒にプレーした落合博満監督率いる中日ドラゴンズへ移籍、新天地でも貴重な戦力として重宝された。2006年に現役引退後は中日・巨人のコーチを歴任。現在は野球解説者を務めている。

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