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気になった菊池涼介の動き。指導者時代に選手へ伝えてきた「カバーリングやバックアップの重要性」

頭を整理して、グラウンドで戦え!実践と復習の繰り返しで、ワンプレー、1打席の濃さは明らかに変わる。犠打バント世界記録を持ち、ゴールデングラブ賞を6回受賞、指導者として中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツで多くの選手を育ててきた川相昌弘が技術論、指導論を体系化した『ベースボールインテリジェンス』(川相昌弘著 12/7発売)を発売します!本書より一部を先行公開します!

2020/11/30

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守備・走塁コーチが見ている視点とは

 カバーリングと同様に、内野手の大事な役割となるのがバックアップだ。ベースを埋めるのがカバーリングであり、野手の後ろに入り悪送球に備えるのがバックアップ。たまに用語を混同して使っている人がいるので、今一度整理しておきたい。
 
 バックアップで一番忙しいのは、間違いなくセカンドである。内野ゴロの場合(主にサードゴロ)、セカンドはファーストの後ろに走る。一塁けん制のときも、悪送球に備えておく。プロ野球のレベルになれば、スローイングミスはそうめったに起こるものではないが、絶対に起きないわけでもない。50回に1回のミスを大きなミスにしないために、バックアップが存在する。
 
 2020年9月22日、東京ドームで行われた巨人対広島でこのようなプレーがあった。同点で迎えた9回裏、広島の守りで2アウト一塁。マウンドには左腕のヘロニモ・フランスア、一塁には代走の若林晃弘、打席には吉川尚輝が入っていた。ここで、若林の盗塁を警戒したフランスアのけん制が悪送球となり、ファウルグラウンドを転がる間に、若林は一気に三塁へ。その直後、吉川にタイムリーが飛び出し、巨人のサヨナラ勝ちとなった。翌日のスポーツ新聞に悪送球時の写真が掲載されていたが、セカンド菊池涼介の姿が気になった。けん制に対して、その場に突っ立ったままで一歩も動いていないのだ。このとき、セカンドは2つのことを頭に入れながら、動かなければいけない。ひとつは、けん制の悪送球に備えて、ファウルグラウンド方向へ走る。もうひとつは、一塁走者が挟まれたことを想定して、一、二塁間のライン上に入る。どちらを選ぶかは、チームや選手によって違いがあるのだが、菊池はそのどちらも選択していなかった。
 
 けん制悪送球なので、二塁進塁は「確定」である。ここは、どう考えても防ぎようがない。守備側が考えることは、三塁に行かせないこと。つまり、ひとつのミスで2つの進塁を許すことを絶対に防がなければいけないのだ。そのために、バックアップがある。ましてや、東京ドームの場合は、ファウルグラウンドにせり出したエキサイトシートがあるので、ある程度のところでボールが止まる。菊池が一歩でも二歩でも、けん制に対して反応していれば、三塁進塁までは防げたのではないか。このとき、若林はヘッドスライディングで戻っているので、立ち上がるまでに時間を要する。たとえ、三進を防げなかったとしても、やるべきプレーをやったうえでのことなら、チームも納得するものだ。守備・走塁コーチは、こうした視点でゲームを見ている。たとえ、主力選手であっても、やっていないことがあればしっかりと指摘しなければいけない。チーム全体の士気にも関わっていくことだからだ。

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