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阪神が18年ぶり優勝。ダイエーでは100打点カルテットが誕生 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2003年編~

2020/11/14

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Getty Images, DELTA・道作



2003年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
阪神   140 .630 728 538  190
中日   140 .525 616 578  38
読売   140 .518 654 681  -27
ヤクルト 140 .518 683 627  56
広島   140 .486 558 653  -95
横浜   140 .324 563 725  -162
 

 
 セ・リーグはメンバーの顔触れががらりと変わったシーズンとなった。松井秀喜とロベルト・ペタジーニ(読売)の名前が消え、1位はwRAA45.1を記録した福留孝介(中日)となった。打撃三部門では無冠だったが、前年から長打力が増しすべての項目に良好な結果を残している。出塁率、wRAA、wOBAなど、得点生産に直結する指標では長打率以外すべてでリーグナンバー1となった。またこの年の福留は三塁打11本という珍しい数字もマークしている。2ケタ三塁打はセ・リーグでは23年ぶりのもので、優秀なベースランナーとしてのスピードを示している。スタッツ全般に前年のブレイクがフロックではなかったことを示したかたちである。

 2位に入ったのは自己最高のパフォーマンスを発揮したアレックス・ラミレス(ヤクルト)。特に打撃3部門の数字は優秀で、40本124打点で本塁打・打点王を獲得するなど、すべて福留の数字を上回った。しかし福留に比べると四球が少なく、凡退によってアウト多く与えたこともあってセイバーメトリクスの評価では一歩譲ることとなっている。
 
 ほかには、ここまで安定して好成績を残し続けていた高橋由伸(読売)がwRAA27.6で3位に浮上。西武から移籍の鈴木健(ヤクルト)が好調で4位。ラミレスとタイで本塁打王を獲得したタイロン・ウッズ(横浜)が5位と並ぶが、この年の話題の中心は優勝した阪神勢ではないだろうか。
 
 阪神打線でベスト10に入ったのは8-10位の矢野輝弘、ジョージ・アリアス、金本知憲。トップを争う打者はいなかったものの各打者が高い能力を示した。特に守備力が重視されるため本来なら打撃面で弱点となるはずの捕手・二塁手・遊撃手に、それぞれ矢野、今岡誠、藤本敦士と好打者を揃えることに成功。これが大きな要因になり、リーグ最多の728得点を挙げた。完全に暗黒時代を抜けたシーズンである。ベスト10圏外選手でも、11位に打率.340で首位打者を獲得した今岡をあげている。
 
 このシーズンのランキングを最も変則的な結果としてしまったのは規定打席不足のペタジーニである。本ランキングに採用しているwRAAは積み上げ要素が強い指標で、打席数が多いほど高い値を記録するには有利になる。しかしペタジーニはこの年414打席と規定打席不足ながら福留の45.1を上回るwRAA45.6を記録。参考記録ではあるが1位となってしまったのだ。これは後にも先にも唯一で、当然のことながら1打席あたりの質を表すwOBA.474は1位福留の.424を圧倒している。歴史上最強の規定打席不足と断言でき、いかに恐ろしい打者であったのかを如実に物語っている。
 
 この頃は打率同様、長打率も「規定打席に不足する分をすべて凡打として扱ってもなお1位の場合はその打者を最高長打率とする」ルールが適用されていた。しかし出塁率にはなぜかその規定がなかった。ペタジーニはこの条件で出塁率・長打率どちらも1位であったが、長打率のみ1位となるという、スタッツ的にかなり訳ありのシーズンを演出することとなっている。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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