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広島・野村謙二郎がトリプル3を達成 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1995年編~

2020/10/12

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Getty Images, DELTA・道作



1995年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
ヤクルト 130 .631 601 495  106
広島   131 .569 635 510  125
読売   131 .554 527 494  33
横浜   130 .508 562 588  -26
中日   130 .385 498 651  -153
阪神   130 .354 451 536  -85
 

 
 前年の負傷から古田敦也(ヤクルト)が復帰。これに伴いヤクルトの成績が回復し、82勝を挙げて優勝した。
 
 順調にリーグ内での地位を上げていた江藤智(広島)が初のwRAA1位となった。39本塁打、106打点で本塁打・打点王を獲得したばかりではなく、長打率.608もリーグ1位。二塁打も多かったため、70本の長打を記録した。この長打数は、セ・リーグでは1987年のポンセ以来のことである。これで江藤の本塁打王は2度目で、長打のスペシャリストとしての地位を築いた年となった。2位のトーマス・オマリー(ヤクルト)は出塁率.429で最高出塁率を獲得してのランクイン。本塁打も前年から倍増させる31本を放ち、MVPを獲得した。

 3位野村謙二郎(広島)は32本塁打を記録してのランクインとなった。この年、30を超える本塁打を放った野村だが、キャリアを見渡すと10本台のシーズンが多く、20本台を記録することはなかった。この年は最多安打(3回目)、最多塁打、最多得点(2回目)を獲得。トリプル3も記録するなど、キャリア最高のスタッツを残した。4位のアロンゾ・パウエル(中日)は.355で首位打者を獲得。29試合に欠場したためにwRAAは4位に留まったが長打もよく出ており、wOBAはリーグ首位を記録した。前年ベスト10圏外の注目選手として取り上げた金本知憲(広島)は順調にベスト10入り。多くの優秀な打者を抱えた広島は前年に続きこの年もリーグ最多得点を記録した。
 
 ベスト10圏外での注目選手は広島の緒方孝市。後年広島の監督として優勝を経験するが、この年は選手として初めて他球団のファンにも脅威として認識されたシーズンである。規定打席未到達ながらwOBAは5位相当。さらにこれだけの打力を持ちながら盗塁王を獲得している。
 
 この年は90年代以後を代表する選手が多く見られる。また、この後に歴史的な傑出の選手が立て続けに登場。選手の才能的には日本野球の歴史上最大の黄金期を迎えていたと考える。間違った練習を最初からやっていない世代がプロ入りする年齢になってきたのだ。メジャー挑戦が野茂で途切れず、続いたのには理由がある。しかし近年では、最高の才能を発揮し続ける選手を、NPBの球団が果たして何年雇い続けられるのかという新たな問題も発生している。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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