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規格外の新人・清原和博が3割30本を達成 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1986年編~

2020/09/10

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Getty Images, DELTA・道作



1986年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
広島   130 .613 511 420  91
読売   130 .610 600 437  163
阪神   130 .500 574 536  38
横浜大洋 130 .448 482 547  -65
中日   130 .446 432 519  -87
ヤクルト 130 .389 480 620  -140
 

 
 パ・リーグでは落合が2年連続で三冠王を獲得したが、セ・リーグでも前年に続きランディ・バース(阪神)が三冠王を獲得。wRAA85.8をはじめ、ほとんどの打撃指標で首位を独占した。バースがこの年に残した打率.389は現在も残るNPB史上最高記録である。セイバーメトリクスの視点での評価では前年をはるかに上回っており、wRAAの勝利換算は9.1を記録。これは王貞治(読売)の数字を除外した場合、現在でも歴代最高の成績となる。

 このシーズンはセ・リーグでもストライクゾーンが変わり、三振は4153個から4691個へと13%増。四球は2683個から1906個へと、驚きの29%減となった。ゾーン変更についてはセ・リーグの方が徹底されていたようだ。
 
 2位のウォーレン・クロマティ(読売)もwRAA59.9をマーク。普通のシーズンなら完全にリーグ最強打者となるような数字だが、この年はバースが強力すぎた。阪神からはバースに加え、真弓明信、岡田彰布の3人がランクイン。しかしリーグ最多の600得点を記録したのは読売だった。前年圧倒的な攻撃力で優勝した阪神打線にはすでに変調が見られる。ちなみにリーグ戦は最少の420失点に抑えた広島が優勝している。
 
 またこの年のセ・リーグは、初めて1位から4位まですべて外国人枠選手が占めることになった。このとき世はバブル時代にさしかかっていた。現代よりは(相対的に)高い年俸を提示できたため、高い能力の選手でも雇用しやすかったという時代背景がランキングに影響している面もある。競争相手となるMLB球団のサラリーも、今よりはかなり安かった。
 
 ベスト10圏外での注目選手は11位と12位に並んだ高木豊(横浜大洋)とゲーリー(中日)の2人。高木は通算321盗塁のスピードスター。打撃では出塁系の打者として好成績を継続しているが、この時代にわずか1本塁打で11位にランクインしている。そしてゲーリーは高木と正反対の、低出塁率、高長打率のスタッツを残し12位と、コントラストの際立つ並びが興味深い。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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