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安打製造機・榎本喜八が全盛期に セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1966年編~

2020/07/12

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Getty Images, DELTA・道作



1966年のパ・リーグ

チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点差
南海  133 .608 477 394  83
西鉄  138 .577 426 354  72
東映  136 .538 480 443  37
東京  134 .469 462 460  2
阪急  134 .438 447 491  -44
近鉄  133 .369 388 538  -150
 

 
 打撃絶好調の榎本喜八(東京)がwRAA60.4を記録。wRAAでは、1960年以来の2度目の首位となった。wRAAから出塁率や長打率に至るまで、得点との関係が深い指標はすべて1位。これはパ・リーグでは8年ぶり、1958年の中西太(西鉄)以来のことであった。2位の野村克也(南海)はwRAA52.1を記録。デビューからしばらくは出塁率が.350前後と、強打者としてはそれほど強みになっていなかったが、この数年前から出塁率.400前後をコンスタントに記録するまでに改善。この時期は野村の現役時代の中でも大きな利得を計上している。

 3位はwRAA40.5を記録した張本勲(東映)。直近4年連続でリーグ首位にはなっていないが、いずれも3位以内に入っており、能力の高さをうかがわせる。5位には土井正博(近鉄)が2度目のランクインとなった。この後、パ・リーグは世代交代の時期を迎える。
 
 また、チームの勢力図も新旧交代が迫っている。この年の南海の優勝は、以降1年2シーズン制で行った1973年を除くと最後になる。1950年からこの年まで17年連続2位以上となった常勝・南海だが、以後、年間勝率1位、または勝ち数1位になることはチーム名消滅までなかった。
 
 得点上位5球団の年間総得点はすべて400点台を記録。最多チームと5番目のチームの間の差が54点と、差が生まれにくいシーズンであった。各チームの得点力が拮抗してきているようだ。なお、前年から比べるとリーグ全体の四球が大きく減少。2年前から比べると2320から1786へと3/4ほどになっていることは興味深い。各チーム前年の140試合から135試合前後へと試合数は減少しているものの、四球の減少はそれをはるかに上回る。
 
 ベスト10圏外の選手としては、大杉勝男(東映)と長池徳二(阪急)を取り上げたい。こちらもこのあとに起こる世代交代に大きく関係する2選手だ。このあとレギュラーを獲得し強打者として活躍する2人だが、この年はそれぞれ203打席と206打席の出場にとどまり、wRAAもやや平均を上回るレベルと、そう大きくはない。しかしそれぞれが.441、.439と水準を上回る長打率を記録しており、後年の強打の片りんを見せている。

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