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「おじさんの一言で野球を始めるきっかけに」。横浜DeNAベイスターズ・加賀繁が模索する永遠のテーマ

現役時代、先発・リリーフとフル回転し、ベイスターズの投手陣を支えた加賀繁さん。現在は『野球振興・スクール事業部』の球団職員として、試行錯誤しながら、子どもたちに野球の魅力を発信すべく、日々奮闘している。

2020/05/27

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現役時代のファンとの縁が今へ繋がる

 この熱い思いは、自身の野球人生を反映しているのだという。加賀は、少年時代に初めてグラウンドに立つと、中学、高校、大学、社会人と野球にこだわりつづけ、ついにはプロの世界へと辿りついた。すべては幼き日に野球に魅力を感じたことが発端になっている。
 
「小学3年生のときから野球を始めたのですが、そのときすごく熱心で、優しく、そして厳しく教えてくれたコーチの方がいらしたんです。50代か60代だったと思うのですが、守備練習では自分でダイビングキャッチなど手本を見せてくれて『俺でも捕れるんだから、簡単にできるよ!』って。その姿が今でも脳裏に焼き付いていて、すごく大きな影響を受けているんです。ワクワクしたし興奮もしました。朝から晩まで一緒になって泥まみれで教えてくれて……。そのコーチの教え方や人柄が、野球をつづけていく上で大きな力になったのは間違いないですね」
 
 かつて自分が指導者のおかげで野球に魅了され夢中になったように、加賀もまた子どもたちに野球の面白さを伝えたいと心から思っている。
 
 振り返れば現役時代から加賀はファンサービス旺盛な選手だった。ファーム施設のあった横須賀市長浦では、練習後に自らファンの前まで足を運び、サインをし、他愛もない会話をする加賀の姿をよく見かけたものだ。じつはそのときのやり取りが、今につながっている面もあるのだという。
 
「球団の仕事をするようになってイベントなどでファンの方々に再会すると『現役のとき、うちの子に優しく野球を教えてくれたから、野球をやるようになったんですよ』と教えてくれたり、スクールでも『加賀さんはめちゃくちゃわかりやすく野球を教えてくれるんだよ』と自分の子どもに伝えてくれる方々がいるんですよ。かつて応援してくれたファンの方々にそうやって言ってもらえるのは、すごく嬉しいことですし、不思議な感じもしますよね。本当、ありがたいことです」
 

 
 ファンを大切にしてきた加賀の人柄は、確実に伝わっているようだ。
 
 さて昨今のコロナ禍により社会情勢は一変し、スクールでの指導においても変化が求められている。加賀としてはどのようなアプローチで、この難局をポジティブに変えていこうとしているのか。
 
「スクールの方では現在、Zoomを使った指導をするようにしています。家でもできるトレーニングを一緒にやって、的確なアドバイスを送るように。今は外でプレーをすることはできませんが、少しでも楽しく野球の練習をしてもらえるように考えていますし、新しいアイデアを出せていけたらなと思っています」
 
 永遠のテーマは、子どもたちに野球の楽しさを伝えること――。
 
 心血を注げる仕事に出会い、難しくも模索し、実践する日々は充実しているという。現役時代、どんな厳しい難局であっても引くことなく立ち向かっていった加賀のピッチングは今も忘れられない。指導者としても、あのときの粘り強さをきっと発揮することができるはずだ。加賀に指導された子どもたちが、いずれ花咲く日を楽しみにしたい。

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