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佐々岡監督が強調する “一体感”とは。大エースの静かなる船出――カープ出身の指導者たちが語る「カープの育成術」#2

V奪還を目指し新体制となった広島東洋カープ。佐々岡真司新監督をはじめ、カープ出身の指導者たちが語った一流選手を育てる「カープの育成術」とは。カープ戦実況歴20年、長年カープを見てきた中国放送(RCC)アナウンサー・坂上俊次氏の新刊『「育てて勝つ」はカープの流儀』から一部抜粋で公開。

2020/03/06

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ガッツポーズも「一体感」の一つ

 そんな男だからこそ、監督就任会見で強調した言葉は〝一体感〞だった。カープでは小さな大投手と呼ばれた長谷川良平以来53年ぶりの投手出身監督である。決して、ポジション別の監督適性といった議論ではない。ホークスを日本一に導いた工藤公康監督にせよ、ドラゴンズ・タイガース・イーグルスを頂点に導いた星野仙一監督にせよ、投手の出身である。ただ、カープの歴史では久々ということもあり、そこにわずかな不安要素を見つけて記事の行間に滲ませるのは、メディアの性かもしれない。
 
 しかし、佐々岡は、こんな議論に反論することもなければ、前出の投手出身監督の華々しい成果を議論に持ち出すこともしない。
 
「投手としての経験、コーチとしての経験はありますが、野手に関する起用や交代、采配は勉強しないといけません。まだ就任したばかりで大変さの実感はありませんが、しっかりやっていかないといけないと思います。野手に関する経験が少ないぶんは、他のコーチの助けを借りながらやっていきたいです。みんなでやっていくしかありません」
 
 もちろん、力を結集させるのは首脳陣だけではない。選手もスタッフも、すべての力をひとつにするつもりである。
 
「ベンチとレギュラーがバラバラでなく、一体となって戦いたいです。打った選手はもちろん、ベンチもガッツポーズをするとか、みんなでワイワイした空気にするのも一体感でしょう。監督やコーチも一試合一試合みんなで束になっていくこと、これは力だと思います」
 
 ひょっとすると、監督が派手なガッツポーズを見せるかもしれない。いや、その前に、コーチや選手が感情を剥き出しにするかもしれない。この光景こそが、孤高のマウンドを投げ抜いてきた男の目指すところなのである。
 
 一体感の持つ力を感じながら、佐々岡は野球人生を切り拓いてきた。その記憶は、30年以上前にさかのぼる。
 
 
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書籍情報


『「育てて勝つ」はカープの流儀』
定価:本体1600円+税
 

【内容紹介】
球団創立70年 強さの礎は、いつの時代も変わらず
 
名選手を輩出する土壌、脈々と受け継がれる“育成術”
カープ戦実況歴20年の名物アナウンサーが徹底取材
 
「猛練習」「工夫」「チームワーク」「愛情」
カープはいかにして、一流選手を育て上げるのか?
 
球界でも定評のあるカープの育成術に迫る
 

これまで、カープでは多くの選手が育ってきた。ドラフト下位指名であっても、猛練習でトッププレーヤーになった例も少なくない。外国人選手も、カープにやってきて才能が開花したケースが目立つ。 どんな人材が大きく成長するのか。また、カープはいかにして、一流選手を育て上げるのか。その方法論に迫るのが、本書の狙いである。
 
1960~70年代の猛練習。1990年代、野村謙二郎・金本知憲、前田智徳、そして佐々岡真司が背中で伝えたプロ意識。そこから、猛練習と工夫のハイブリッド世代。成長に近道はあるのか、遠まわりこそ学びの要素が多いのか、はたまた第3の道があるのか。カープの歴史を彩った指導者の話に耳を傾けたい。
 
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「育てて勝つ」はカープの流儀
 
【著者紹介】
坂上俊次(さかうえ しゅんじ)
中国放送(RCC)アナウンサー。1975年12月21日生まれ。兵庫県伊丹市出身。1999年に株式会社中国放送へ入社し、カープ戦実況歴は20年になる。スポーツ中継のほかに、ラジオ「それ聴け Veryカープ」、テレビ「Eタウンスポーツ」などを担当。また、中国地方をスポーツ関連産業で盛り上げるためのプロジェクト「ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク(スポコラファイブ)」の座長を務める。著書に『カープ魂 33の人生訓』『惚れる力』、(サンフィールド)、『優勝請負人』(本分社)、『優勝請負人2』(本分社)があり、『優勝請負人』は、第5回広島本大賞を受賞。現在「デイリースポーツ広島版」「広島アスリートマガジン」で連載を持っている。

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