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寒さ、大雨、日没……季節のうつろいが物語る2019年のチーム成績の推移【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#117】

2019年のファイターズの試合を振り返ると、天候にまつわるエピソードが多々浮かぶ。

2019/12/22

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意気揚々から心折れかけた1年

 次は5月の熊本・藤崎台球場だ。雨天の試合になった。このときの雨が全国に被害をもたらした大雨のはしりだ。確か「屋久島に50年の大雨」が降ったとニュースになっていた。試合は上沢と千賀の投げ合いだった。さすが両チームの開幕投手、1点を争う好ゲームとなった。4回表、ファイターズの新戦力、王柏融がタイムリーを放ち、先制する。当方としてはこれで試合を成立させれば、いつ降雨コールドになっても平気だ。
 
 その裏、ソフトバンクの得点圏に走者を進める。2死1、2塁でバッター牧原の場面だった。牧原が自打球をヒザに当てた。牧原は治療のため、いったんベンチへ下がる。ファイターズナインは雨の降るなか、ポジションで牧原の帰りを待つことになった。時間にして約3分間だそうだ。藤崎台球場のスタンドのそこかしこで傘の花が咲く。と、センターのフェンス際で西川遥輝が折りたたみ傘を差している。どうやら外野席のホークスファンから傘を借りたらしい。後に判明したことだが彼は「ホークス応援してもええから、オレの打席だけ応援よろしく」などと言っていた。
 
 そのほのぼのとした光景は「アンブレラハルキ」として話題になり、2019年シーズンを代表するシーンのひとつとなった。まだ「単騎逃げるソフトバンク、追い足をためる日本ハム」の図式が生きてた頃だ。まだ誰も西武がまくって来るなんて想像していない。僕らは無邪気に「アンブレラハルキ」に喝采を送っていた。
 
 3つめの試合は8月下旬の釧路市民球場。8・28、西武戦の日没コールドゲームだ。あの試合も忘れ難い。ファイターズは8月ほとんど勝てなくなり、この釧路シリーズの連敗でダメを押された格好だ。前日の第1戦はエラーから自滅、この日の第2戦は乱打戦になった。が、5回裏にいったん7対6と逆転したのだが、6回表またもエラーがらみで再逆転を許す。打ち合いになったら西武に分がある。こりゃ負けかなぁと目の前が暗くなった。
 
 が、暗くなったのは落胆のせいではなかったのだ。曇天の空が実際に暗くなった。あいにく釧路市民球場には照明設備がない。8回表、先頭の森友哉がセンターオーバーのホームランを放ったが、西川遥輝の動きが完全におかしかった。打球を見失っている。審判が集まって協議の後、プロ野球20年ぶりの日没コールドゲームを宣告した。前回は1999年6月20日、近鉄-オリックス戦(札幌円山)だそうだ。つまり、21世紀初の日没コールド。スコアは8対10だった。あぁ、こういう終わり方かと感じ入ったものだ。
 
 まぁ、本当のことを言うと翌日、帯広でも負けて道東シリーズ3連敗なのだが、不思議とあの日の日没コールドとともに2019年シーズンがとっぷり暮れていったような気がしている。あの後、9月は田中賢介とのお別れ月間だった。
 
 ファイターズは天候に左右されず試合が行える札幌ドームを本拠地にしているから、映像や写真を見てもあんまり季節感がないのだ。が、シーズンの記憶は案外、天候と結びついて記憶されている。そして季節のうつろいはチーム成績の推移を物語っている。あのときはまだ意気さかんだった。あのとき、心が折れかけた。あの日の日没にすべてが溶けた……。そして2019年のノートは閉じられるのだ。ファンの皆さん、おつかれ様&よいお年を!
 
吉田輝星2年目の飛躍へ――郷里のマウンド、先発としての期待【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#118】
 

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