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不安要素を並外れた才能でカバー、清宮幸太郎のスター性【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#103】

右手有鈎骨骨折が復帰した清宮幸太郎。ベストな状態とは言えないが、一軍昇格後大事な場面で活躍を見せている。

2019/06/09

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急仕上げでも結果を出すのはもはや天性か

 で、清宮はリハビリに耐え、無事復帰したんだ。2軍戦の様子も見に行った。ありがたいことに大丈夫そうだった。だけどね、急仕上げだったんだ。2軍戦復帰からそんなに時間がたっていない。鎌ケ谷のロッテ戦で2打席限定(DH)の実戦復帰を果たしたのが5月14日、メットライフドームの西武戦で1軍復帰したのが5月24日だ。この間わずか10日。バッティングの感覚もまだまだだし、何よりろくに守備していない。そんなに早く1軍に上げて大丈夫かなぁと思った。1軍は打線のテコ入れが必要だったけれど、清宮だって生身の人間だ。今の清宮は「ベストの清宮」とは違う。そんないきなり上で活躍できるとは…。
 
 それができてしまったのだ。僕はよくわからない。それが天性ってものなのか。マスコミが騒ぎ、ファンが勝手に夢をふくらませる。ハタで見ていてヒヤヒヤだ。打順のめぐりなのか持って生まれた運なのか、また走者を置いたいい場面で回ってくるのだ。マジか~と超心配した。それは例えたらトミー・ジョン手術明けの大谷翔平を心配するような感じだ。
 
 で、大谷翔平も清宮幸太郎も(ひとの心配をよそに)フツーに活躍してしまうのだ。びっくりだ。清宮の場合、バットを振る絶対数も少ないし、試合勘も不安だし、守備を練習する時間も取れなかったはずだよ。それがDHで出て慣らして、ファーストでファインプレーをして、今日はレフトを守った。バッティングはどんどん上向いている。特に交流戦のセリーグ主催試合ではキーマンになっている。
 
 あり得ないと思うのだ。
 
「清宮はすごく活躍してると(セ・リーグ中継を聞いたりしてると)思われているが、それはどうなんだろうと思う。それはどうなんだろうと思うが、本当に活躍している」
 
 僕の申し上げたいニュアンスはそういうことなのだ。ヤクルト戦では同期の村上宗隆と「新世代スラッガー対決」と注目を集めた。それがまた村上が初戦、いきなり上沢直之からバックスクリーン弾を放つんだなぁ。度胆を抜かれたよ。言っておくけどこっちはケガ明けで、向こうはもう15号だ。バリバリなのだ。比較にならんでしょうと弱気になっていたら、3戦トータルの印象では(ホームランこそないものの)けっこう仕事をした。「村上もすごいが、清宮もやる」という感じになっていた。
 
 だから、僕も素直に喜ぶべきかもしれない。王に続いて清宮が戻って、相乗効果で打線が活発になった。マスコミが騒ぐ通りのスターだ。伸び盛りだ。それでいいのかもしれないよ。
 
 まぁ、僕はぐじぐじ言いながら結局、人一倍喜んでいるとも言える。並外れた才能を持ってるヤツは「不安要素」があっても、その穴の部分をを平気で埋めちゃうんだなぁ。つまり、「不安要素」はないのと同じことになっちゃうんだなぁと、そういうことなのだ。もはやエンジンかかって来てるしなぁ。
 
上沢直之を襲った一球――『不動のエース』への物語は来季へ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#104】
 

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