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不安要素を並外れた才能でカバー、清宮幸太郎のスター性【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#103】

右手有鈎骨骨折が復帰した清宮幸太郎。ベストな状態とは言えないが、一軍昇格後大事な場面で活躍を見せている。

2019/06/09

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厄介な箇所の骨折に不安が募ったが……

 清宮幸太郎の話がしたい。交流戦2カード目、甲子園の阪神1回戦(6月7日)は途中で引っ込んでしまったが、今季初めて5番レフトでスタメン出場、2打数1安打1打点の活躍だった。1打点はセンターへの犠飛で先制点を稼ぎ出したものだ。清宮はしっかり戦力になっている。
 
 いや、大方の野球ファンは「そりゃそうだろう」という反応だと思うのだ。今さら何を言う、そりゃ清宮は戦力になってるだろうと。それは例えばスポーツ紙によく目を通されるセ・リーグのファンなどに顕著だと思う。清宮は記事になる選手だ。甲子園の試合に出場すれば「清宮が甲子園に帰ってきた」「聖地に凱旋」「甲子園プロ初安打」と書きたてられる。出稿量が多い。常に話題になっている。それはつまりスター選手の証なのだが、実際以上に大活躍しているように見えてしまう。
 
 あぁ、ちょっと待ってほしい。僕は清宮が実は大して活躍していない的な話が書きたいのではない。確かに活躍しているのだ。本稿執筆の7日夜だって先制点を挙げた。だからすごく微妙なニュアンスの原稿を書こうとしているのだ。うーん、何とかいっしょうけんめい言語化してみる。
 
 こんな感じだろうか。
 
「清宮はすごく活躍してると(セ・リーグ中継を聞いたりしてると)思われているが、それはどうなんだろうと思う。それはどうなんだろうと思うが、本当に活躍している」
 
 んー、何言ってるか伝わらないですね。
 
 僕は大のファイターズファンであり、清宮幸太郎のファンなのだ。2年目のシーズン、大飛躍を期待していた。春先は順調だった。特に大田泰示とともに絶好調で打ちまくっていたオープン戦の時期だ。完全に打線の核として機能していた。ガンガン打って好きなだけ点が入る。こりゃレアードに出て行かれてもあわてないわけだと思った。今季は清宮が本格化する。王柏融はたぶん日本の投手に慣れる時間が必要だろう。そこは清宮がカバーする。楽しみだぞ。王柏融が合ってきたら清宮と2人、手がつけられないぞ。2019年ファイターズ打線すげぇ。そんな期待だった。
 
 それが清宮骨折で暗転する。右手有鈎骨骨折。僕は悪いことを言って、もし本当になってしまったらひどく後悔しそうで書かなかったが、実は最悪の事態も考えた。有鈎骨骨折は人によるのだ。骨がつながったらあっさり復帰できたという選手もいる代わり、何度も同じところを骨折する選手もいる。また骨折を機に「長距離打者として終わった」と自ら語る原辰徳氏のようなケースもある。千差万別だが、悪いほうに出るケースもあり得る。オープン戦の清宮骨折のVTRを見ながら、不安でたまらなかった。
 
 これは「強く振る」というか、強いインパクトでバットが返せるバッターにつきものの骨折なのだ。ボールをちゃんと打っていれば有鈎骨は折れない。空振りが怖いのだ。変化球を落とされたりして空振りすると、本来なら強いインパクトでボールを叩くはずの力が行き場を失う。それが引き手の有鈎骨に負荷として全部かかる。グリップエンドに小指をかけるバッターが壊しやすいともいう。引き手のネジが飛ぶ感覚だ。僕は森本稀哲が苦しんだのを身近で知っている。すごく厄介なのだ。
 
 清宮幸太郎は日本球界の将来を担う逸材だ。もし、壊れてしまったらと心配でならなかった。もちろん「壊れてしまっていたら」なんて怖くて書けない。僕は東京下町住まいなんだけど、浅草寺の観音様にたのみに行ったよ。どうか元気な清宮幸太郎を見せてください…。

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