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”動かない”ことが奇策へ 固定概念にとらわれない落合流采配論【横尾弘一の野球のミカタ】

ペナントレースを制するためには、監督の采配が当然カギを握る。しかし、采配の意味をすべて『何かをする』ことだと考えていないだろうか。落合監督時代、監督にとって常道と思った策が対戦相手にとって奇策になったケースが幾度とあった。それはなぜか?

2015/05/25

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常道と思った策でも、奇襲ととらえられると……

 その考えを象徴した場面が、2011年の日本シリーズ第2戦にあった。福岡ソフトバンクと1-1で迎えた10回表に、二死から一番打者の荒木雅博が内野安打で出塁した。

 この場面で多くのファンや評論家は、二番の井端弘和(現巨人)が2ストライクに追い込まれるまでに、荒木に盗塁させると見ていた。
 なぜなら、荒木が二盗に成功すれば、井端のヒットで勝ち越し点が奪える。もし失敗しても、次の回を井端から始められるからだ。福岡ソフトバンクのバッテリーも同じ考え方だったようだが、落合監督は荒木に盗塁のサインを出さなかった。その結果、井端は四球を選んで二死一、二塁となり、続く三番・森野将彦のレフト前ヒットで決勝点をもぎ取ったのである。

 あえて舞台裏を明かせば、144試合という長丁場のペナントレースを戦い抜いた荒木の足の状態は万全ではなく、盗塁してもセーフになれる確率は低かった。そこで、この場面で盗塁を仕掛けるのが常套手段と考えられているのを逆手に取り、走ると見せかけてバッテリーにプレッシャーをかけ、選球眼のいい井端でチャンスを拡大するのが最善の策だと考えたのだ。

 このように、「采配とは選手を動かすもの」いう固定観念にとらわれず、「何もしないことも采配」と考えたのが、中日ドラゴンズというチームの戦い方の幅や勝機を広げたのだと、落合は振り返る。

「私は監督に就任した2004年の開幕戦で、それまで3年間も登板のなかった川崎憲次郎を先発投手に指名した。これで『落合は何をするかわからない』と言われるようになり、こちらが常道と思った策でも奇襲だととらえられた。そうやって、どこかで相手が想像もしていないような手を打つと、次第に「何をしてくるんだ」と相手のほうが考えすぎ、勝手に転んだりしてくれるものなんだ」

 ペナントレースは約半年に及ぶ長い戦いだ。

 1勝の価値は変わらないとはいえ、試合を重ねれば重ねるほど、ひとつの勝利、もっと言えばワンプレーの持つ意味は大きくなる。だからこそ、自分たちで勝機をつかむ方法に加え、相手を自滅させて白星を手にする戦い方も大きな武器になってくるのだ。

 終盤までの混戦も予想される今季、そうした狡猾な、かつ痛快な戦いを実践できるチームはどこなのだろうか。

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