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野村克也氏が指摘する、巨人・小林誠司が正捕手になるために必要なスキル<再掲載>

野村克也氏が11日、虚血性心不全により84歳で死去した。現役時代は戦後初の三冠王(1965年)に輝き、引退後はヤクルトを3度の日本一に導いた名将。現代の野球観にも多大な影響を与えた唯一無二の存在だった。 また指導者としても、数多くの名選手を育て上げてきた手腕は、今なお求める声が大きい。“ノムさん”が日本野球の行く末を憂い生前に残した言葉には、未来につながる気づきが詰まっている。「未来のプロ野球選手を夢見る選手を教える指導者はどのような知識を備えるべきか、そしてどのような指導をすべきか」。2019年4月16日に同氏の著書「指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論」から一部抜粋で公開したインタビューを再掲載する。

2020/02/12

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小林が首脳陣から信頼されていない理由

 なぜ小林は首脳陣から信頼されていないのか。それは彼のリード面の問題が挙げられる。
 
 小林はエースの菅野智之とベストバッテリー賞を獲ったこともあったし、WBCでも侍ジャパンの投手陣を牽引する活躍を見せた。これだけ聞けば、「巨人の正捕手は小林でいいじゃないか」と思えてくる。
 
 菅野が投げて、小林がリードすれば、相手打線を抑えられる―― 。巨人ファンはそのように考えているようだが、小林は菅野と息の合ったコンビになることが重要なのではない。菅野より1段も2段も下の投手の力を最大限引き出してあげることのほうが大切だし、巨人の首脳陣も彼にはそれを求めているのだ。
 
 たしかに菅野は球威、コントロール、スタミナ、メンタルと、あらゆる面において、非の打ちどころがない、素晴らしい技量とタフさを持ち合わせている。相手打者が菅野のストレートを狙っていても、それを上回る威力があるため、容易に打ち返せない。それゆえに自責点が少なく、防御率も安定している。
 
 ということは、菅野とバッテリーを組んでいるときの小林は、「彼のリードが素晴らしいから相手打線を抑えている」のではなく、「菅野の球威やボールのキレが、打者の想像をはるかに上回っているから抑えられている」とも考えられる。
 
 そこで、WBCで小林が活躍できた理由をひも解くと、則本昂大(楽天)や千賀滉大(ソフトバンク)、石川歩(ロッテ)ら、各チームのエース級の投手が揃っていたことが大きい。つまり、「小林のリードがいいから抑えた」のではなく、「投手の能力や出来が素晴らしいからこそ、抑えることができた」というわけだ。
 

著者プロフィール

野村克也
1935年、京都府生まれ。峰山高校卒業後、1954年にテスト生として南海ホークス(現福岡ソフトバンクホークス)に入団。3年目でレギュラーに定着すると以降、球界を代表する捕手として活躍。70年には南海ホークスの選手兼任監督に就任し、73年にパ・リーグ優勝を果たす。78年、選手としてロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)に移籍。79年、西武ライオンズに移籍、翌80年に45歳で現役引退。27年間の現役生活では、三冠王1回、MVP5回、本塁打王9回、打点王7回、首位打者1回、ベストナイン19回。 三冠王は戦後初、通算657本塁打は歴代2位の記録。90年、ヤクルトスワローズの監督に就任後に低迷していたチームを再建し、98年までの在任期間中に4回のリーグ優勝(日本シリーズ優勝3回)を果たす。99年~2001年阪神タイガース監督。06年~09年、東北楽天ゴールデンイーグルス監督。著書に『野村ノート』(小学館)『野村の流儀』(ぴあ)など

 

書籍概要


『指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論』
定価:本体1600円+税
 
その教え方が、選手を潰す! 間違いだらけの野球観を捨て、『本物の野球』を学べ
アマチュア指導者へ贈る、選手指導入門編
 
野球競技人口が年々減少していく中、特に未来のプロ野球選手を育てる“指導者”が果たす役割は大きくなっている。選手一人一人の将来に向けて、勝ち負けだけにとらわれず、どのように教えるか。指導者としてあるべき姿、基本をまとめたのがこの1冊だ。具体的な技術論から、選手を教える上で指導者が心得るべきリーダー論まで、野村元監督の野球人生における経験をすべて凝縮した1冊になっている。
 
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指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論

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