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さらばレアード。打棒もキャラも育てた、栗山ファイターズの粘り強さ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#92】

レアードの退団が正式に決定した。チームメイトやファンに愛された「人気者」が遂にファイターズを去る。

2018/12/26

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1年目、期待されていたのはもう一人の助っ人だった

「レアード 退団決定 条件面で折り合いつかず」(12月21日スポニチ)の報道を万感の想いで見つめた。ファイターズはいったん自由契約にした後も、ブランドン・レアードと残留交渉を重ねてきた。が、ついに不調に終わったそうだ。「数日前に厳しいということだった」と吉村浩GMが明かしている。2016年シーズン、パのホームラン王、そして日本シリーズMVPに輝いた「スシポーズ」の人気者がチームを去ったのだ。来日4年間の通算ホームランは131本だった。
 
 正直、えええ、これで終わりなのかなぁという感じだ。別れの機会も持たないまま、レアードとさよならするのか。レアードはただの外国人選手とは違った。キャラが立っていた。だからこそ「スシボーイ」グッズは売れに売れ、札幌ドームの大型ビジョンでイニング間に「スシポーズ」コンテスト(カメラに抜かれた観客が次々にスシを握る)が開催されていたのだ。今後は噂されている米球界復帰なのか、はたまたNPBの他球団で助っ人として腕をふるうのか。ファンとしてこれを願うのはおかしいとわかっているのだが、どうせならふんだんに目にできるパのチームへ行かないかなぁ。
 
 レアードの思い出はこのまま引き出しの奥へしまい込むのがのが惜しい。レアードという選手はファンの幸福感と結びついている。たぶん10年たってもレアードの名前を聞いたファンは皆、笑顔になると思う。陽気な人柄。お立ち台で「そーですねぇ~」と日本語で前置きするユーモア感覚。劇的なホームランも多かった。そしてスシポーズだ。僕は「スシダイスキ レアード」と書かれたサイン色紙を見たとき、爆笑したものだ。楽しいヤツだったなぁ。
 
 僕はレアードはファイターズの「代表作」のひとつだと思っている。彼の打棒もキャラも、ファイターズだからこそ開花したのだ。事情は多少、大田泰示に似ている。ファイターズはちょっと使ってダメでも引っ込めない。試合で使い続け、粘り強く待つのだ。
 
 2015年シーズン、来日1年目のレアードを覚えているだろうか。あの年、ファイターズはレアード、ハーミッダと左右の外国人打者を補強した。キャンプで評判がよかったのは中距離砲、ジェレミー・ハーミッダのほうだ。選球眼がよく、率が残せそうだと評論家が口を揃えた。右の大砲、レアードに関しては「バッティングが粗い」「外のスライダーでくるくる回りそう」と厳しい声が多かった。僕もハーミッダは「般若ハーミッダ」なんてネタにしたけれど、レアードはあんまりいじらなかった。打てそうにないなぁと思った。ただ唯一、内角球を左手一本でさばく打ち方に芸を感じた。あれは誰にでもできるもんじゃない。

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