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”男気”黒田が見せた「気概」

黒田博樹が、藤浪に対して詰め寄った行為が話題になった。これに対して、プロ野球OBからも賛否両論の声が上がる。黒田の「怒気」はもちろん藤浪に対して示したものだが、その「気概」は、ふがいないチームに対する喝でもあったのではないだろうか。

2015/04/27

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黒田の気概は、チームに伝わるか?

 ちょうど、この日のあるスポーツ紙に、興味深い記事が掲載されていた。
 それはカープ球団のトップが、前日の練習中のグラウンドを激励に訪れたというもの。

 和やかそうに歓談する緒方監督とのツーショット写真が、なんとものどかな印象で、

「気楽にやろう」
それが記事の見出しだった。

『監督は『すいません』と言うが、気にするな、気楽にやろうということだ。力はあるんだから、ちょっとしたきっかけですぐ上がるよ』
 球団トップは、そう語ったという。

 この記事を読んで、それこそ激怒したカープファンもいたことだろう。
 すくなくても私は、あきれてしまった。
「なにをへらへらしているのだろうか」「何十年もファンに優勝をもたらしていないオーナーが軽々しく口にしていいセリフなのか」と。

「重苦しいチームの雰囲気を変える」つもりだったそうだが、それなら球団内で伝えればすむこと。
 わざわざ対外的な場で吐くようなセリフではないだろう。

 覇気の見えないチームに、ファンのいらいらが募っているような時期に、かりにも球団トップが口にしていいい言葉なのだろうか。
 そんなことを思っていた矢先の、黒田の怒りの発露だった。
 だから黒田がいった「へらへらしてたら」を、つい球団トップに向けたものかと勘ぐってしまったのだった。

 カープが初優勝した年。それまで優勝の味を知らなかった選手たちは意識しすぎて、後半になって失速していた。
 そんなある日のドラゴンズ戦で、ホームに突っ込んだ三村敏之を捕手がタッチした後、ミットで顔面を払ったことがあった。

 これには日頃は温厚な三村も激怒して、取っ組み合いのケンカとなり両軍入り乱れての乱闘となった。
 この三村の闘志が意気消沈したチームに火を点け、カープはふたたび快進撃をはじめ、あの10月15日の薄暮の中の栄冠へとつながっていった。
「カープ初優勝への道」では、欠かさず語られるエピソードだ。

 グラウンドでの勝ち負けを支配しているのは、球団のトップのおもわくや発言ではない。選手個々のモチベーションだ。
 今回の黒田の気概が、あのときの三村の闘志のようにチームに喝を入れることになり、「待望久しかったカープ優勝への道」のエポックとして語られる日が来ることを願っている。

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