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打たれても揺るがぬ想い。宮西は「最高のプロフェッショナル」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#85】

負けられない試合が続く中でこそ生まれる名勝負がある。対ソフトバンク23回戦8回表の中村晃と宮西尚生の対決は職人どうしのしびれる対決だった。

2018/09/22

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球史に残る、中継ぎの名投手

 3年ノーヒットでもこの1打席で打てたことに千金の値打ちがある。中村のコメントにはその喜びがあふれている。柳田、今宮の分もしっかり仕事をした。もちろん僕はファイターズファンだから打たれた瞬間、悲鳴を上げたんだが、この一打に関しては納得している。プロの対決だった。久々に見応え十分。宮西は後続を断って、1点ビハインドで8回を締めくくった。当方としては宮西が打たれたならしょうがないのだ。
 
 実は当コラムで宮西を取り上げることは早々決めていた。今年は6月末に通算600試合登板を達成、同時に日本記録タイの273ホールドを達成し話題を集めたのだが、その後、新記録を更新し続けて、9月20日現在、292ホールド(626登板)をマークしている。またホールドポイントのほうも9月17日オリックス戦で通算324HPの日本記録タイに並んだのだ。これは今季中の単独1位達成がほぼ確実だと思われる。
 
 つまりどういうことかというと、宮西尚生は2018年シーズン、ホールド&ホールドポイントの両方でプロ野球記録の頂点に立ったのだ。宮西よりも成功した中継ぎ投手は存在しない。ちなみに彼はかつて一度も先発を務めたことがなく、11年連続50試合登板を続ける文字通りのスペシャリストだ。中継ぎのステイタスを超一流まで押し上げた。ファイターズ投手陣の徹底した分業制のなかでひと際、存在感を発揮してきた。
 
 だからコラムで取り上げて当然なのだが、いやもう本当にねぇ、よりにもよってソフトバンクとの決戦で負け投手になった日を取り上げるなんて。長年のファイターズファンとして非常に不本意なのだ。非常に不本意だけど、あの一場面にプロ野球の光と影、最高のコクを味わった。もうどうかすると3年かけた伏線があの一打席で回収されてるような、深掘りのきくドラマだ。すごいもん見たなぁ。
 
「中継ぎはニュースになるのは打たれたときだけ。毎試合目立つことなく終わるのがいちばんいい。僕にスポットライトはいらない」(宮西尚生コメント)
 
 不本意ながらその言葉通りのことになってしまった。だけど、これは言いたい。僕らは宮西の姿にいつも勇気をもらっている。最高のプロフェッショナルを僕らは知っている。そのプロ中のプロに「この左腕をファイターズに捧げたい」と言ってもらえた幸せを知っている。宮西尚生は誇りだ。次はやり返してほしい。
 
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