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「日本の選手会は何のためにあるんですか?」野茂英雄の一言が、選手会を変えた【事務局長・松原徹氏に聞く、日本プロ野球選手会の実態4】

2004年の球界再編問題の時に、日本のプロ野球選手会の存在を知った野球ファンの方は多くいるのではないだろうか。今回、ノンフィクションライターの田崎健太氏がプロ野球選手会事務局長の松原徹氏へ選手会、そして野球界の抱える様々な問題について取材を行った。3回目以降は選手会事務局の仕事内容や、2000年代に入り選手会のあり方が問われる諸問題へどのように対応していったのか。その実情に迫る。

2015/04/19

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ベースボールチャンネル編集部

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野茂の言葉を教訓に、選手会が変わる

  そうした試みの一つが、「年俸調査結果」に基づいたアドバイスである。
 プロ野球の世界にはいくつもの〝からくり〟がある。その一つが選手の年俸をはっきりと発表しない推定年俸だ。
 例えば――。
 ある球団の中心選手の年俸を推定1億円とする。契約更改の際、球団はその選手の名前を出して、君が彼以上の年俸をもらうわけにはいかないだろうと説得するのだ。野球界には上下関係がある。そう言われると強く出られない選手もいる。

 実際には、推定「1億円」の中心選手に対しては、もっと払っていることがある。そのことを口止めしておけば、他の選手の年俸を抑えることができる。結果として安く上がるのだ。

 一方、メジャーリーグはというと――。
 シーズンが終わり、その年のフリーエージェントの大物選手たちの契約交渉が始まると、次第にその年の「市場」ができあがっていく――。
 昨シーズン何勝、防御率がこれぐらい投手ならば何年契約で何億の年俸。球団、選手の代理人たちは市場の動きを見ながら、交渉の落としどころを見つけていく。
 市場は需要と供給のバランスによって成り立っている。市場に出る選手の数が多ければ、その価値は落ち、少なければ上がる。

 選手たちは他の選手の評価額に敏感だ。そして自分の適正額を自ずから理解するようになる。「推定年俸」で膜に覆われて曖昧にされて、納得いかないまま契約を結んでいる選手が少なくない日本とは全く違うのだ。

「選手会は推定年俸ではない、本当の年俸のデータを持っていた。個別の年俸については個人情報なので公開できません。ただ球団ごとの平均数字を見れば、だいたい他の球団の同じような成績の選手と比較することができる。我々も選手に対して球団と交渉するならばこれぐらいの金額にしたらどうだというアドバイスをするようになった」

 その他、松原たちは戦力外通告の時期を統一しようという働きかけもはじめている。

「それまで戦力外通告の時期が決められていなかった。11月末に突然、言われることもあった。その時期だと他の球団はすでに体制が固まっているので、移籍することができない。12球団で戦力外通告の時期を揃えて下さいと」

 次回はいよいよ、日本のプロ野球選手を縛ってきた「選手協約」について触れる――。

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日本プロ野球選手会事務局長
松原徹(まつばら・とおる)
1957年5月、川崎市生まれ。1981年に神奈川大からロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテ・マリーンズ)に球団職員として入団。一軍マネージャーなどを務めた後、1988年12月に選手会事務局へ。2000年4月から事務局長。2004年のプロ野球再編問題では、当時のプロ野球選手会の会長であった古田敦也らとともに日本野球機構側と交渉を行った。

【これまでの連載】
ぼくらは日本の選手会という組織について余りに知らなすぎる――【日本プロ野球選手会事務局長 松原徹回顧録1】
86年オフ、ある男からの呼び出しが、松原氏の運命を変えた【日本プロ野球選手会事務局長 松原徹回顧録2】
選手が言いにくいことを球団に伝え、交渉するのが我々の仕事【事務局長・松原徹氏に聞く、日本プロ野球選手会の実態3】

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