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ラジオ史における前代未聞の事件――TBSラジオ野球中継撤退で実現した「表裏文化放送」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#74】

先日行われた西武との2連戦。実はラジオ中継史上の「事件」が起こっていた。

2018/04/23

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「TBSエキサイトベースボール」打ち切りの余波

 これは一体どういう現象かというと「TBSエキサイトベースボール」打ち切りの余波なのだ。ご存知の通り、TBSラジオは野球中継撤退を決め、4月から夜帯にライムスター宇多丸さんの『アフター6ジャンクション』を編成した。これは系列局の玉突き撤退が心配されたりしたのだが、ことファイターズファンに限ってはまったく別の心配をしていた。TBSラジオのスポーツ部が解体されると、「HBCファイターズナイター」の裏送りがどうなるかわからないのだ。「HBCファイターズナイター」は従来、関東(西武ドーム、千葉マリン)の試合をTBSラジオに委託制作してもらっていた。裏送りというのは、表送り(TBSの本放送、これまでは「TBSエキサイトベースボール」の巨人戦)と対になる用語で、地方局のためだけに送出する(裏)放送のことだ。これまではTBSアナとTBSの解説者がHBC用のファイターズ戦を実況していた。
 
 一方、これがSTVラジオの場合は(従来は)文化放送+ニッポン放送の裏送りだったのだ。きちんと系列の棲み分けができていた。で、今回、何がどうなったかというと、STVラジオは文化放送の表送り、HBCラジオは文化放送の裏送りという、「表裏文化放送現象」が巻き起こったのだ。前代未聞だ。ラジオ史的な「事件」と言える。これから西武の平日ホームゲームは基本、「表裏文化放送」らしい。いやぁ、これはタイムフリーで聴き比べたくなる。
 
 どうやらTBS分の裏送りは文化放送とニッポン放送が分担して当たることになったらしい。「HBCファイターズナイター」でいうなら平日は文化放送、土日はニッポン放送。「STVファイターズLIVE」はその逆で平日はニッポン放送、土日は文化放送。但し、STVは西武の主催試合に関しては文化放送の表送りをネットする。

長引けば「裏裏文化放送」になっていた可能性も

 17日の実況ブースで面白かったのはディレクターの「よかったら最後までいてくれませんか?」という指示だった。STVでネットしてるといっても「ライオンズナイター」は「ライオンズナイター」だから、やっぱり東尾修さんの手前、僕は遠慮するというかおとなしくしていたのだ。大量リードしていても騒がない。実際問題、騒ぐ気にもなれなかった。開幕3連戦の西武の集中打を見ると、何点リードしていても安心できない。僕は何度も「まだ不安ですねぇ」とコメントした。で、その不安は翌日、最悪の形で現実となってしまうのだが。
 
「よかったら最後までいてくれませんか?」はこういう事情だ。そもそも僕は「20時ぐらいから1時間程度の出演」というオファーをいただいたのだった。だけど、試合内容がワンサイドに傾き、かつその日が初のSTV中継ネット(表送り)だったという事情も重なり、ファイターズ側のコメンテーターを後半まで引っ張りたいという状況が発生していた。僕は東尾さんに遠慮しつつ、西武集中打の影におびえつつ、何となくファイターズ側のコメントを続ける。そしてディレクターが言ったのだ。「うち(文化放送)は最大延長22時20分なんですよ。STVさんはその先もあるんです」。
 
 いやまぁ、西武4回戦は幸か不幸かそんなに長引かずに終わった。ファイターズの勝利だった。が、もし長引いたとしたら。「ライオンズナイター」は22時20分きっかりに終わり、その瞬間から「STVファイターズLIVE」は裏送りになる。HBCもやってるから文化放送は裏送り2つで「裏裏らー」と完全な山本リンダ状態だ。で、もうその時間は「ライオンズナイター」ではないから、中継は急激にファイターズ寄りに変貌する可能性を秘めている。もう北海道の人しか聴いていないのだ。
 
 そう考えると「よかったら最後までいてくれませんか?」はなかなか深い指示だ。まぁ、長引かなくて「裏裏」までは実現しなかったけど、「表裏文化放送」の記念すべき初日に参加できたのを手柄としよう。面白かったなぁ。
 
追記、当企画はタイトル通り、ファイターズコラムなので、STVラジオとHBCラジオの「表裏文化放送」を取り上げたが、九州のKBC、RKBでも全く同様のことが起きていることを記した方が親切だなぁと思い直した。こちらは4月3日のL-H戦が嚆矢であった。相対的に文化放送の存在感が増していく気がする。
 
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