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黒田博樹、真の実力はベールに包んだまま――縦の変化を封印し、横の変化で勝負に挑んだ圧巻の96球

8年ぶりに古巣に復帰した黒田博樹の公式戦初戦。強打のヤクルトを7回5安打に封じ込み、日本では07年9月27日のヤクルト戦以来、実に2740日ぶりの勝利となった。この試合、黒田は横の変化で勝負に挑んだ。

2015/03/30

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スプリットはほとんど投げず

 軸としたのはツーシーム。96球中、47.9%と半数近くを、打者の手元で沈む動く速球が占めた。手元で芯を外されたヤクルト打線は、面白いようにゴロの山を築き上げた。5三振を除く16個のアウトの内、12個がゴロアウトだった。
 右打者には内角で手元に食い込ませ何度も詰まらせ、時に外角のボールゾーンからストライクに入れる「バックドア」で見逃しを奪った。
 左打者の内角には、一転「フロントドア」と呼ばれる球になる。内角のボール球と思い腰を引いた左打者をあざ笑うかのように、そこから内角のストライクギリギリへ手元で急変化。外角ギリギリにもビシリと収め、計5三振中3つが見逃しでのものだ。
 このツーシームの軌道からもわかる通り、この日の黒田は「横の変化」で勝負していた。ボール6個分、43.2センチのホームベースを、誰よりも幅広く使っていた。
 もっとも黒田がメジャーから持ち帰ったのは、ツーシームだけではない。ヤンキースに在籍していた昨季、一番の武器としたのは落ちるスプリットだった。
 昨年の全投球に占める球種割合では、ツーシームは39.7%、スプリットは27.4%。それがこの日はスプリットは14球で、14.5%にとどまった。そのほとんどがカウント球で、勝負球に使う場面は限られていた。
 
 黒田はその日の調子で、軸となる球種を変えていく。この日はツーシームだけで押し切った格好で、スプリットを本格的に交えた「縦の変化」は封印していた。
 手の内を隠したのか、はたまた試合前のブルペンでツーシームにより手応えを感じていたのか。もしくはファーストストライクから振ってくるヤクルト打線の積極性を逆手に取ったのか。
 いずれにせよ、まだ実力の片鱗しかのぞかせていないのは確かだ。
 
「いつまで体が続くかわからないですけど、体が続く限りチームのために投げていきたいと思います」
 最後まで黒田らしく殊勝な言葉で奮投を誓ったが、本来持つ奥深さはベールに包んだまま。縦横無尽の活躍をはっきりと予感させた。
 
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