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”転校”した大谷の活躍を刺激に――王貞治を彷彿させる近藤健介の凄み【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#73】

海を渡り、MLBで大谷翔平がさっそく結果を出した。昨年までのチームメイトの活躍を刺激に、ファイターズも上昇気流に乗りたいところ。そんな中、近藤健介がずば抜けた存在感を見せている。

2018/04/07

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近藤の打撃は、剣豪の領域

 さて、見事3連勝を飾った楽天戦で、ずば抜けた存在感を示したのは近藤健介だ。もちろん4日、福山博之&高梨雄平から2打席連続タイムリーを放ち、ヒーローインタビューのスポットを浴びた第2戦の活躍は目覚ましかった。が、本稿執筆が5日夜であるため、ついさっきまで見ていた第3戦の異様さが忘れられない。第3戦、楽天は藤平尚真を先発に立て、近藤健介との「横浜高校対決」が注目されるところとなった。意外にも初対決だそうだ。僕も途中までは名勝負にならないかなぁと思って見ていた。
 
 それが名勝負にはならなかった。この試合、とにかく近藤健介の凄みだけが際立つことになる。読者はバッターの凄みというとホームランとか猛打賞とか(当たり前だが)打つことをイメージするだろう。アクションでいえば豪快なフルスイングといった感じだと思う。それがこの日の近藤の場合、驚くなかれ、何と1スイングしかしなかった。5打席務めて1打数1安打4四球。つまり、一度だけスイングしてヒット、あとは見たのだ。もう剣豪の領域である。震えた。申し訳ないが藤平とは勝負にならない。ついに打率5割、出塁率は.630(4月5日ゲーム終了時点)までハネ上がった。
 
 選球眼がいいこと、空振りが極端に少ないことはイチローを連想させる。が、この四球で歩くことでぐんぐん凄みが増していく感覚は(僕くらいの世代じゃないと生で見てないのがホントに残念だけど)王貞治を思わせるのだ。伝説のホームランキングも1試合何度も何度も歩かされ、しかし、勝負の場面では一振りで仕留めた。まぁ、王さんはギョロ目で威圧感があり、ホームランアーティストだった。近藤とはだいぶタイプが異なる。近藤は威圧感というより自然体だ。長距離砲でもない(1安打も内野安打だった)。だけど、この日は王貞治を感じたのだ。正直言って、そんな打者に生涯もういっぺん会えるなんて思ってもみなかった。

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