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わずか1試合で退団…元西武の“渡り鳥投手”は日本をどうみたのか?【インタビュー】

昨シーズン、埼玉西武ライオンズでわずか1試合のみに登板したアレクシス・キャンデラリオを覚えているだろうか? ドミニカ共和国出身の35歳右腕はこれまで9カ国でプレーした“渡り鳥”だが、日本での生活やプレーをどのように感じたのか。話を聞いた。(取材・文:高橋康光)

2018/02/04

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Yasumitsu Takahashi



「建設現場や塗装の仕事なんかをやりました」

――地元紙には、あなたが一時期生活のために野球を離れ、メキシコや米国で肉体労働などを行っていたとありました
 
 「ええ、本当です。建設現場や塗装の仕事なんかをやりました。それでも練習は続けていました」
 
――そうまでしてもモチベーションを切らさずにいられた理由は何でしょうか
 
 「家族のためです」
 
――日本の野球選手は、海外に出ることが不安なのかは分かりませんが、あまり米国以外の国でプレーしようという人がいないのが現状です。
 
 「もちろん、生まれ育った文化や習慣が違いますからそういう不安があるのは当然です。それでも世界を知るというのは素晴らしいことですし、旅をする中で異文化を受け入れるというのは、野球選手としてのキャリアだけでなく一人の人間としてもプラスになりますよ」
 
――今は新シーズンのチーム探しをしているところですか?
 
 「いいえ、これからです。今はハードにトレーニングするだけです」
 
――どこの国でプレーしたいという希望はないのですか?
 
 「どこでもいいですよ(笑)」
 
 ひととおり質問を終え、雑談をする中で、あなたの人生におけるモットーはと聞くと「Saber es poder(知は力なり)」と間髪入れずに答えてくれた。これまでにも多くのドミニカ人選手と話をしてきたが、彼ほど知性を感じさせてくれる選手にはお目にかかったことはない。
 
 そして、幾多の逆境を乗り越えて多くの国で生き抜いてきたという内面から溢れてくる力強さは、彼に人としての深みを与えている。短い期間ではあったが、日本の若手選手たちがキャンデラリオから何かを学んでいてくれていたらと切に願う。
 
 選手として大きな成功を得たとは言い難いこれまでの彼のキャリアだが、数字的な結果を収めるだけが成功を意味するのではないことを彼から教わった。まだ今季の所属先は未定ということだが、きっと彼のことなら自分で道を切り拓き、世界のどこかで野球を続けていることだろう。

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