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武田久、15年間闘い続けた重圧。清宮、21番継承に「うちらしい」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#66】

リリーフエースとして、15年間ファイターズを支えた武田久。来年からは社会人時代の古巣、日本通運で選手兼コーチとして新しい一歩を踏み出す。

2017/12/16

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プロ入りしてからヒザの状態は万全でなかった

 武田久投手のイメージというと、独特の深く沈み込むフォームから繰り出される、糸を引くような低目のストレートではないか。プロ生活の最後は両ヒザを手術し、それでも痛みをこらえて身体をぐっと沈めていた。今季(2017年シーズン)は痛み止めを飲んで、それがあんまり効かないので激痛をこらえて投げていたんだそうだ。きつかったですねぇ、ヒザさえ良ければ完璧なのにと、そう言ったらものすごく意外な言葉が返ってきた。
 
「僕、プロ入りした2003年に右ヒザやってるんですよ。じん帯です。チームでもトレーナーと、何人かしか知らなかったと思うんですけど、ずっと右ヒザが悪くて、軸足をテープでガチガチに固めて投げてたんですよ。幸いなことにマウンドの傾斜で投げるときだけ痛いんです。走るのはフツーにできたから何とかなったと思います」
 
 いや、これは現役時代は絶対に明かされないエピソードだろう。ファイターズのリリーフエースは軸足のケガを抱えて、毎年60とか70試合ペースをだましだまし投げていたのだ(!)。それもプロ生活のほぼ最初から。プロ入り2年間はその悪いヒザでどう投げたらいいか、2軍で試行錯誤する日々だった。結局、元通り沈み込むフォームで行くことに落ち着く。武田久投手はガンコに自分の流儀を貫いたのだ。まぁ、ダメならダメで仕方ないやという思い切りもあった。
 
 60試合以上のペースで投げるリリーバーは調子の悪いときも出て行かねばならない。ましてヒザの状態は万全ではない。割り切りが必要だったという。イニングを全体で見て、とにかく勝ち試合を壊さないようにする。その投球哲学を聞いて、久さんはリアリストだなぁと思った。自分の状態、試合状況、相手打線を考えて、株のトレーダーが「損切り」するように捨てるものはスパッと捨てる。そりゃ三者連続三振に切って取れば気持ちいいけれど、それができない日もチームを勝たせなきゃならない。

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