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ソフトバンク、緻密な工藤采配に加わった“達川イズム”。日本一奪回へ、全力プレーにみる「大馬鹿」の真髄

福岡ソフトバンクホークスが日本シリーズ進出を決めた。2連敗の嫌な流れを断ち切り、日本一への切符をつかんだ指揮官の采配は、今季からチームに加わった達川光男ヘッドコーチの進言が大きく影響しているという。

2017/10/24

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“馬鹿タイプ”を特効薬にした達川ヘッドの読み

 各方面から仕入れた情報によれば、この2人の先発起用によってCS劣勢の流れを変えようと指揮官に進言したのは参謀格の達川光男ヘッドコーチだったと聞く。
 
 城所は一球一球に対し、一心不乱になってガムシャラになるタイプ。達川ヘッドが好むタイプの選手だ。そして何よりも柳田は同じ広島商業高校・野球部出身。フルスイングがトレードマークとなっているように、全力プレーが持ち味となっているトリプルスリー経験者は達川ヘッドにとって同郷の後輩である。
 
 基本的にプレッシャーにも動じない、いい意味での“馬鹿タイプ”の2人を「特効薬」としてチームに注入すれば、必ずや好結果を及ぼすはず。百戦錬磨の達川ヘッドは、そのように読んだのである。
 
 なるほど、冷静に考えてみれば確かに「馬鹿野球」という言葉は現役時代から緻密な理論派を貫いている工藤監督らしくはない。個人的にはどちらかといえば、達川ヘッドのほうに「“ああだ、こうだ”といろいろ考えずに開き直って行け」と口にしそうなイメージが漂う。
 
 ちなみに、その達川ヘッドは工藤監督自ら入閣を熱望して今季から新たに招へいされた。そう考えると、やはり深く接していくうちにこのポストシーズンになって“達川イズム”が指揮官にも「馬鹿野球」という言葉でついにインプットされたのではないかと思えてならない。
 
 達川ヘッドには現役時代はもちろんのこと、コーチ時代もCSの経験がない。しかしながら広島東洋カープでの通算15年間の現役生活のうち、チームの黄金期を築き上げたセ・リーグを代表する正捕手として日本シリーズ制覇を経験している。
 
 2003年には阪神タイガースの一軍バッテリーコーチを努め、日本一にこそ輝けなかったものの球団としては18年ぶりの進出となった日本シリーズを戦った。これまで何度も短期決戦の修羅場に直面した中で、チームにとって必要となる要素について独自の感覚を持ち合わせている。
 
 工藤監督も自分にはない感覚の持ち主として、達川ヘッドの存在をチーム内で大きく尊重している。レギュラーシーズン中は垣間見えなかった“工藤イズム”と“達川イズム”の融合。そういう新たな局面も見えてきたホークスがやはり強いチームであることは間違いないだろう。
 
 果たして日本シリーズでは各々がさらに「大馬鹿」なることで今季のチームスローガン「1(ワン)ダホー!」が成熟し、悲願の頂点に立つことが出来るのか。注目したい。

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