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古木克明、ドラフト1位の肖像#2――ベイスターズは希望球団にあらず。「来るな、来るな」

かつて「ドラフト1位」でプロに入団した選手1人の野球人生をクローズアップする。華やかな世界として脚光を浴びる一方で、現役生活では「ドラフト1位」という肩書に苦悩し、厳しさも味わった。その選手にとって、果たしてプロ野球という世界はどのようなものだったのだろうか。

2017/09/20

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ドラフト指名に対する本音

 夏の甲子園が終わり、進路を決める時期がやってきた。
 
 高校屈指のスラッガーである古木のところにはプロ野球各球団のスカウトが何度も見に来ていた。
 
 中でも福岡ダイエーホークスは、高校2年生のときから上位で指名すると明言していたという。
 
 次に熱心だったのが横浜ベイスターズだった。ドラフト会議前、古木はベイスターズのスカウトと会っている。その席で、ベイスターズは松坂を1位指名する、松坂を抽選で外した場合、古木を指名するという。
 
 ただ、古木にとってベイスターズは希望球団ではなかった。
 98年度のドラフト会議は11月20日に新高輪プリンスホテルで開かれた。
 この年のドラフト会議は少々盛り上がりに欠けていた。大学、社会人の選手には1球団二人を上限に逆指名の権利が与えられていた。読売ジャイアンツは大阪体育大学の上原浩治と近畿大学の二岡智宏、中日ドラゴンズは日本生命の福留孝介、NTT東海の岩瀬仁紀などの指名が確定していたのだ。焦点は松坂の交渉権をどこが獲得するか、だった。
 
 古木はドラフト中継を教室のテレビで観ていた。まずは第1回指名選手の発表が始まった。
 
「授業中で観たくないと思っていたんですけれど、他の生徒や先生も興味があるからテレビをつけたんです」
 
 日本ハムファイターズ、西武ライオンズ、そしてベイスターズが松坂を1位指名。沖縄水産の新垣渚にはホークスとオリックス・ブルーウェーブの2球団が1位指名した。
 
「ああ、また松坂を指名したと思っていて、純粋におー、すごいなと」
 
 抽選の結果、松坂の交渉権は西武、新垣はオリックスが獲得した。
 
 ベイスターズが松坂を外したことで、自分を指名するかもしれないと古木は思った。ただし、第1希望のホークスも新垣を外している。ホークスが1位で指名してくれるかもしれない。
 
 ところが――。
 ホークスの指名は九州学院高校の内野手、吉本亮だった。そして、ベイスターズの指名選手として古木の名前が読み上げられた。
 
「来るな、来るなって念じてました。そうしたら、うわっ、来ちゃったよって。拍手とかは起こらなかったですね。みんなぼくが横浜に行きたくないというのを知っていたので、教室中がしらーっとしてましたね」

 

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