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牙を出し始めた“百獣の王”西武。外崎と山川、若手の覚せい生んだ指揮官の想い

埼玉西武ライオンズが躍進を続けている。8月4日には59年ぶりの13連勝を果たし、パ・リーグ2強の状況を打開するような快進撃だ。辻監督の“我慢”の采配と、その期待に応える若手の成長が好調を支えている。

2017/08/09

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「結果残さないと明日はない」、チーム好調であるが故の危機感

 山川は自分の立ち位置をどう受け止めてきたのか。
 
 「とにかく結果を出すだけ。レギュラーは自分でつかむしかないということです。5月に2軍に落ちたときは打てなかった。僕は守れる選手じゃないので、打てないと落ちるのは当然ですよね。代打から結果を残して、スタメンで出る日が増えてきましたけど、この打席がすべてという想いで打席に入っています」と危機感をにじませる。
 
 昨季、山川はちょっとしたブレークを果たした。自身初となるシーズン2桁本塁打をマークして期待を抱かせた。本人も「下位打線に2桁打てる打者がひとりいるのは大きいと思う」と満足さえしていた。
 
 昨年10本塁打を放ったころの話を尋ねると、山川は口を真一文字に引き締めた。
  
 「去年はチーム自体が下位にいたのもあって、僕が結果を出せない試合があっても、次の日はスタメンで出られました。今は気持ちが全然違う。明日がないですから。その中で、則本さんから2本塁打を打てたり、競った中でタイムリーを打てたのは自信になります」
 
 7月21日から8月4日までで、西武は破竹の13連勝を飾った。
 
 先発はエース菊池雄星の存在感、ウルフの安定感、十亀剣の復調があり、ブルペン陣は武隈祥太、牧田和久、増田達至の存在がある。
 
 打線では秋山・源田の出塁、浅村・中村の勝負強さが目立つが、それだけでは13もの連勝を果たせるものではない。もうひと踏ん張りの戦力の底上げという部分において、外崎や山川の覚せいがチームに与えた影響は大きく、指揮官の信頼も高まっている。
 
 「外崎はいつも元気にグラウンドを走り回っている。見ていても気持ちいいじゃないですか。本当に野球小僧ですよ、あいつは。それだけじゃなくてね、しっかり結果を残せるようになってきた。山川もバッティングフォームが開いて大振りをしているように見えて、追い込まれたらコンパクトに振っていますから成長してきていると思いますよ」
 
 指揮官自身が結果を欲しがれば欲しがるほど、目先を見せてしまうというのが1軍の采配というものだ。
 
 しかし、今季に就任したばかりの辻監督は、先を見ていたかのように我慢して、我慢して、選手たちの成長を待った。そして、戦力の厚みが生まれた。13連勝はその成長過程で起きたものだ。
 
 低迷からの脱却を目論む百獣の王がようやく牙を出し始めた。

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