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西武・菊池がたどり着いた“新境地”。パワーだけじゃない、明らかなスタイルの変化

埼玉西武ライオンズのエース菊池雄星は、今季ここまで8勝4敗の成績を残している。防御率は2.03(7月10日時点)でリーグトップを走っているが、開幕以来すべてが順風満帆なわけではない。

2017/07/11

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開幕から好調維持も、突如崩されたパワーピッチング

 昨オフ、菊池は新球種・フォークの練習に取り組んだ。これまでと同じでは1年間フルに戦えない。もっと将来のことを考えたときに、ストレートとスライダーが8割という配球で投げ続けるだけでは、クオリティピッチはできないと考えた。
 
 今季の菊池は開幕から好調だった。ストレートは150キロを記録し、スライダーは切れまくる。新球種・フォークは、シーズン序盤にチェンジアップへと衣替えしたが、それも進化の過程の一つだった。パワーを押し出したピッチングで快調に滑り出していた。
 
「フォークの手応えもあったんですけど、フォークを覚える過程の中で、変化球はこうやって落とすんだというのをつかんだ。それをチェンジアップで試したら、上手く行くんじゃないかなと思ったんです。フォークをやめたんだって思われるかもしれないけど、それはそれで意味のあるチャレンジだったと思います」
 
 開幕からの菊池の投球はパワーピッチング一辺倒だった。好調で球威があったことも、影響しただろう。ストレートでぐいぐい攻め、そのストレートを意識させたうえで、カットボールに近い速いスライダーと、空振りを取る曲がりの大きいスライダーを使い分け、チェンジアップを挟む。それだけで十分に抑えられた。
 
 対ソフトバンクには勝てないというジンクスは残り続けたが、交流戦を終えて、防御率1点台をマーク。疑いようのないピッチングだったのは確かだった。
 
 ところが、交流戦を挟んでリーグ再開後、そのピッチングが崩された。
 
 6月23日のソフトバンク戦は3回途中7失点で炎上した。約2年ぶりのヤフオクドームの登板でマウンドに慣れようとしているうちに集中打を浴びた。
 
 ソフトバンク戦だけの敗戦だけなら、「苦手意識」で片づけることもできた。衝撃的だったのは6月30日のオリックス戦での敗戦だ。
 
 マレーロの2本塁打3失点で敗戦投手になった。ただの敗戦投手ではなく、オリックス打線に11安打を浴びたのだ。
 
 どこに、何を投げても、打ち返される。
 
「投球フォームに癖が出て、球種がバレているのかもしれない」。菊池は疑心暗鬼になり、開幕から続くパワーピッチングが相手にとって脅威ではなくなっていたのだった。

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