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大谷、藤浪、菅野ら大型投手活躍も“180センチ信仰”への疑問。ひそかに存在感を増す小柄な右腕たち【野球考#2】

2017年のプロ野球はシーズンインに向け、選手たちは続々と自主トレーニングに励んでいる。シーズン開幕がいまから待ち遠しいが、ベースボールチャンネルでは、シーズン中とは異なる視点から野球を考察していきたい。その名も「野球考」。第2回目は低身長右腕についての考察だ。大谷翔平、藤浪晋太郎など、球界の右腕といえば、高身長を武器にする投手の台頭が著しいが、一方、低身長の右腕は本当に実力に乏しいのか。毎年、ドラフト候補を追いながら、スカウトとも深く精通しているスポーツライター・谷上史朗氏による考察をお送りする。

2017/01/16

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持っているパワーの違いではなく、出力の違い

 サイズにより、基本的なパワーに差は生まれる面はある。投手と打者の違いはあるが、173センチながら1年目から10本塁打(故障のため63試合の出場)を放った吉田正尚と、193センチの打者・大谷の話をしたことがある。すると今季はクリーンアップも期待のスラッガー候補はこんなことを言っていた。
 
「大谷君の持っているパワーと僕の持っているパワーじゃ明らかに向こうが上。そこで大谷君みたいにパワーを出し切られたら正直敵わないというのはありますけど、体は大きくても持っているものを出しきれていない人には勝てる可能性が十分ある。持っているパワーも大事ですけど、その出し方がより大事。そのためにも大切なのは体の使い方です」  
  
 伝説の剛球王・山口高志(元阪急ブレーブス)は公称172センチながら実際の身長は170センチを切っていた。その体で今なお語り継がれるストレートを投げ込んだ。当時を思い出すとまさに全身を使い切ったダイナミックなフォームが蘇ってくる。
 
 市立神港時代の恩師に繰り返し言われた「ボールを地面に叩きつけるように投げろ!」という言葉を実践したフォームは、テークバックで右肩を大きく下げ、顔は天井を向き、上体は傾く。ここから、左ヒザを突っ張り、腕を目一杯振り、上体を思い切りかぶせる。縦回転で振り切られた両腕と顔はブレーキをかけられることなく振り切られ、剛球は唸りを上げて放たれていった……。
 
 山口が憧れだったという関西大の先輩であり、大投手の村山実(元阪神)も体を使い切ってのザトペック投法で知られた。身長は175センチだった。
 
 最近では171センチの小川泰弘(ヤクルト)がライアン投法で知られるが、上背の面で“劣る”投手は、体を余すところなく使い切ることでより大きなエネルギーを生み、力強い球につなげる、ここが一つなのだろう。
 
 ただ、体を使い切るゆえ、消耗も激しくなる。100の力を100出すため、1年を通しての継続力、あるいは、シーズンを重ねる中での安定感に差が出やすくなる。上背の話を尋ねると「大きいほうが体力はある」とその利点を口にするスカウトもいる。

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