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熟考の末の決断――「生涯・阪神」宣言で残留した鳥谷

虎党にとっては新年早々、朗報だ。海外FA権を行使してメジャー移籍を目指していたタイガースのキャプテン・鳥谷の残留を発表した。

2015/01/12

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夢を諦め、生涯阪神で

 メジャーは、早大時代から憧れた舞台だった。海外FA権を取得したが、12、13年と2年続けて権利を行使せず。そのつど1年契約で更改してきたが、来季34歳を迎える年齢的にも最後のチャンスと権利行使を決めた。
 
 スコット・ボラス氏と代理人契約を結び、新天地を探った。ブルージェイズは二塁手として、パドレスは本職の遊撃手として、獲得に興味を示していると米メディアは報じ続けた。他にもメッツ、ナショナルズなど内野手が手薄な球団の名前が連日躍った。そのボラス氏は11月のGM会議の席上で、「メジャー契約で、レギュラーとしてプレーできるところ」と鳥谷の希望を代弁していた。
 
 ブルージェイズのアレックス・アンソポウロスGMは米メディアの取材に「かなり視察を重ねてきたし、彼を気に入っているスカウトもいる。うちにはフィットする選手だと思う」と高い評価を口にしていた。
 
 キャンプ直前まで好条件のオファーを待つこともできたが、これ以上遅らせて阪神に迷惑をかけることもできないと、夢を諦め、球団への愛を貫いた。
 また鳥谷の決断により、95年の野茂英雄氏から20年連続で紡がれてきた日本人大リーガーのメジャーデビュー記録は途切れる可能性が出てきた。翌96年にはマック鈴木氏が、97年には長谷川滋利氏、伊良部秀輝氏ら新たな侍たちがベースボールの本場へ渡り、挑戦を続けてきた。
 このオフはオリックス・金子、広島・前田健らが交渉の過程でメジャー挑戦を断念した。インディアンス傘下マイナーの村田透投手や、昨年は独立リーグでプレーした元ロッテの渡辺俊介投手らがメジャーの舞台を目指している。
 
「ファンの皆さんには大きなご心配をおかけした分、リーグ優勝、日本一を勝ち取り、その喜びを分かち合えるよう、今シーズンも全力でプレーさせていただきたいと思います」
 
 発表したコメントの最後をこう締めた鳥谷。2カ月間熟考を重ねた末の決断に、頭の中は完全に切り替わっている。
 
 阪神は今季、球団創設80周年の節目を迎える。もちろん目指すは1985年以来、30年ぶりの日本一。全国の虎党が狂喜乱舞したあの伝説の1年。当時まだ、未就学児だったキャプテンが、大黒柱としてその再現を誓った。

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