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新人王の高梨裕稔、大卒3年目で才能開花。即戦力ではなく『素直さと将来性』を評価した日本ハムの面目躍如【2016年ブレイク選手】

大卒3年目、高梨裕稔にとって2016年は大きな転機となった。シーズン序盤は中継ぎだったが、途中から先発に定着。日本ハムの10年ぶり日本一に大きく貢献した。

2016/12/21

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日本ハムは高梨のどこを評価したのか?

 手前みそになるが、大学時代に高梨を取材したことがある。その際には、187センチの上背からのストレートと切れ味鋭いフォークには魅力を感じたものの、精度が低かった。5、6球に1球くらいの割合でアウトローに決まるくらいで、日本球界では彼の成長を待てないのではないかと思ったものだった。

 そんな予想を大きく裏切る、3年目の大ブレイクである。

 高梨はもともと千葉県の無名校出身の選手だった。高校3年の夏の大会を迎える頃は「2部か、3部リーグの大学に行こう」と考えていた。

 その最後の夏に優勝候補の一角・木更津総合と対戦したのが人生の変わり目だった。木更津総合を視察にきた山梨学院大・高橋一三監督(故人)ら首脳陣の目に留まり、それから4年、地道に歩みを進めた。

 日本ハムの大渕隆スカウトディレクターは、高梨の大学時代をこう振り返る。

「素材のいい選手でしたね。全国的な実績はありませんでしたが、スラっとしていて、ピッチャーらしい体系で伸びしろを感じました。粗削りであるけれども、抑えるポイントを分かっていました。大卒の選手は全てが即戦力とは思っていないんです。特に高梨のようなしなやかなに投げるタイプは時間を掛けても良いという考えのもとで、指名に至りました」

 スカウティングと育成の上手い日本ハムらしいコメントだが、当然、素材だけを重視したわけでもない。

 大渕は続ける。

「(出身の)山梨学院大の伊藤彰監督が当時はコーチをされていて、色々お話を伺いました。高梨はノートをこまめにつけていて、これが単なる日記じゃなく内容が良かった。うちもファームではノートをつけさせたりしているので、(日本ハムの方針と)合うんじゃないかなというのはありました。高梨は人間的に本当にまっさらな子でね、その素直さがこれほどの成長につながったんじゃないでしょうか。契約時の『(指名)ありがとうございます』の言葉が印象的でしたが、あれから始まったように思います」

 プロ入りして2年目に1軍デビュー。華々しいデビューではなかったものの、少しずつ経験を積み重ねた。次から次へとやってくる課題をひとつずつクリアしてきた。

「去年の今頃はこの賞を獲れるとはまったく思っていませんでした。使い続けてくれた監督やコーチ、野球人生で出会った人たちに感謝したいです」

 新人王受賞後、球団が発表した高梨のコメントはそんな言葉だった。
 大卒選手の中にはプライドが抜けず、殻を破れない選手も多いという。この素直な姿勢こそ、高梨が成長を続けた要因だろう。

 来季はクリーブランド・インディアンスから同じ右腕の村田透が加入するなど、ローテーション争いは過熱する。「今年は結果を残した1年だったかもしれませんが、残し続けて一流と言われる選手にならないといけない」ともコメントしている。新人王を獲得しても、同じ場所に留まっているつもりはないのだろう。

 一流への階段を、一歩、また一歩と昇り続けるはずだ。

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