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生き残りを懸けたトライアウトは『イベント』にあらず。華やかさ不要、今一度開催意義の見直しを

11月12日にプロ野球12球団トライアウトが開催された。今年は甲子園球場で開催されたが、残念なシーンが目立った。

2016/12/05

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例年以上にトライアウト合格組は少

 もうひとつ残念だったのが、打席を終えた選手たちが次々とベンチ裏に引き上げてしまったことだ。投手はそのポジション上、仕方のないことかもしれないが、打席を終えた選手たちがグラウンドから次々に姿を消し、終盤に差し掛かると、バッテリー以外に一人しかポジションが付いていないということまで起きていたのだ。
 
 失策するシーンがあると球場からは大きなため息が漏れることがあり、マイナス面を見せたくないという気持ちが作用したのかもしれない。しかし、力がないからこの舞台にいるのもまた事実で、大事なのはまだ改善がみえるレベルなのかどうかではないか。
 
 プレーする選手のプラス面がどこまであり、課題はどこにあるのか。それさえ乗り越えられれば、変わっていくのではないか。それを見せることに、トライアウトの本当の意義があるのではないか。
 
 今回のトライアウトに参加した選手の中で、その後に契約を勝ち取ったのは現在のところ、東北楽天ゴールデンイーグルスの榎本葵と阪神の柴田講平だけだという。
 
 皮肉にも榎本は、先述したポジションが1人になっても、グラウンドに立ち続けた選手だった。センターのポジションからショートフライを追いに行くなどの姿勢が、インパクトを残したのだろう。
 
 そして、柴田は、投手の最後に登場したのが同じ阪神のトラヴィスだったということで、センターのポジションについていた。ともに戦った元チームメイトの奮闘を支えようという姿勢は、野球人として大事な要素だったといえる。
 
 昨今のテレビ特番などの影響もあってたくさんの人や関係者から注目されるのは喜ばしいことだし、トライアウトがなかった頃に比べれば、救われた選手も多く生まれているのはまぎれもない事実だ。
 
 しかし、今はその方向性がひとつのイベントに収まってしまっているように思えて仕方がない。
 アマチュア時代には輝いた選手たちが、プロの世界に何の足跡を残すこともできずに球界を去っていくのは本当に寂しいことだ。
  
 花が咲く可能性のある芽に、少しでも“陽”が当てられるように。
 選手を含め、すべての野球関係者が、トライアウトの意義を今一度考え直さなければいけないのではないだろうか。

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