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履正社・山口選手の決断は尊重も……条件付きプロ志望届が既成事実化される懸念【小宮山悟の眼】

今年のドラフト会議で、日本ハムから6位指名を受けた履正社高校の山口裕次郎選手が入団拒否した。どちらにも非はないが、その過程において気になる点がある。

2016/11/13

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カテゴリーが上がるほどプロへの道は厳しく

 たとえば、ある将来有望な高校球児が、入団を希望する球団と組んで、ドラフト前に「社会人野球に進む」と公言。ほとんどの球団は指名を回避するが、その球団だけ下位でその選手を指名。ドラフト後に有望選手は「思い切ってプロに挑戦してみることにします」と翻意する。
 
 こうして、下位入団のスーパールーキーが誕生するわけだ。当て馬にされた社会人チームも、翌年以降のドラフトで何人かそのプロ球団に入団できれば御の字だろう。
 
 調査書とプロ志望届には、そういう裏取引をなくす大きな意味があるのだ。
 しかし、山口選手のように、プロ志望届を提出しながら、そこに入団の条件をつけたら、それらの意味がなくなってしまうではないか。
 
 大学や社会人へ進み、実力をつけてからプロで勝負したいと考える高校球児がいても、もちろん構わないが、その場合は調査書を返すべきでないし、プロ志望届も提出するべきでない。
 
 最後に余計なお節介をひとつ。長年、アマとプロの野球界に身を置き、さまざまな選手と接してきた経験から言えば、プロでプレーしたい意向がある場合、高校生の段階で才能の輝きだけを評価して指名してもらえるのなら、素直にプロの道に進んだほうがいいと思う。
 
 高校と比べて、大学、社会人とカテゴリーが上がれば、野球のレベルも格段に上がる。その中で目立つ存在にならなければ、プロから声はかからない。
 
 山口選手がさらに成長し、3年後にドラフト上位の評価をされるような選手になることを願っているが、カテゴリーが上がるだけ、プロへの入り口が狭き門になることだけは知っておいてもらいたい。

小宮山悟(こみやま・さとる)
 
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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