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大谷という切り札を巧みに使った日本ハム。予想していた想定を超え、チグハグさが露見した広島【小宮山悟の眼】

10年ぶりに日本一に輝いた日本ハム。両チームの勝敗の差はどこにあったのだろうか。

2016/11/07

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普段着野球を展開した日本ハム

 一方、日本ハムに目を移せば、「接戦になればなるほど本領を発揮する」というチームカラー通りの野球を展開できたと思う。

 レギュラーシーズンで、ソフトバンクを大逆転し、CSでもそのソフトバンクを苦しみながらも退けた経験が、修羅場を潜り抜けたチームの強さとして表れていた。その点で、ダントツでセリーグを制し、CSも比較的楽に勝ち上がった広島と差が出たと思う。
 また、CSで絶好調だった田中広輔、今季の広島打線の核となった鈴木誠也を抑え込んだ分析力という点でも、上手だった。
 
 クローザー不在という状況で、中継ぎ投手たちが伸び伸びと投球し活躍したが、それもベンチ全体に「いざとなればクローザー大谷」という共通認識があったからだろう。CSのときのように、クローザー大谷は実現しなかったが、広島ベンチは常にそのことを意識しながら戦っていただろう。
 
 第6戦8回裏、2死満塁で中田が打席に入った時、大谷はネクストバッターズサークルに登場し、マウンド上のジャクソンにプレッシャーをかけた。結果は押し出しの四球。役割を果たした。
 
 日本ハムは、大谷という切り札を「使うぞ、使うぞ」と見せつけながら、上手に試合を運んでいった。大谷の存在感の大きさを見せつけられたし、改めて、日本ハムは大谷のチームなのだと実感させられた。
 
 それにしても、今年の日本シリーズは見応えがあった。実際にシーソーゲームになったわけではないが、どの試合でも主導権をどちらが握るか定まらない展開が続いたからだろう。存分に野球を楽しませてくれた日本ハムと広島の両チームに感謝したい。
 
小宮山悟(こみやま・さとる)
 
 1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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