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【ドラフト交差点】父は甲子園優勝経験、高校日本代表の正捕手・九鬼隆平(秀岳館)。目標は「日本球界の屋台骨を支える」

2016年度のドラフト会議が20日に迫っている。この1年を振り返ると、様々な選手たちがドラフト戦線に名乗りを上げてきた。そんなドラフト候補たちをリポートする。今回は秀岳館の捕手・九鬼隆平だ。

2016/10/15

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万全ではなかったセンバツ大会

 大会前から「優勝候補、秀岳館の捕手」として大きな注目を集めたセンバツだったが、万全の状態には程遠かった。初戦の花咲徳栄戦でファウルチップを受けた右手人差し指を骨折したため、捕球、送球ともに本来の精彩を欠いてしまうのだった。

「自分の状態が相手にも伝わっていたのか、ずいぶんと仕掛けられました。盗塁阻止には自信があったのに、走られることが本当に悔しくて……」

 敗れた高松商戦でも先制された4回にふたつの盗塁を許した。サヨナラで辛勝した準々決勝の木更津総合戦でもふたつの盗塁を許している。ただ、春の結果はその後のステップに向けた大きなきっかけとなった。

指の状態が回復した夏には送球の安定感が大幅にアップ。甲子園の北海戦では鈴木大和に2盗塁を許したが、準々決勝では見事な送球で鈴木昭汰(常総学院)の足を封じた。一塁走者へのピックオフなどもあり、視野の広さや咄嗟の判断力の高さもアピールし、春に辛口採点を与えていたスカウト陣の評価を覆すパフォーマンスを発揮したのだった。

 打者としても強打線の4番打者として君臨した。

「4番の座り心地ですか? 当然マークが厳しくなるので配球としては厳しくなってきますが、そこをかいくぐって打てた時には最高の気分になります。今では“自分が4番じゃないと”というこだわりもあります」

 2年秋以降、一度も譲ることがなかった“定位置”へのこだわりも人一倍強かった。

 ぐっと軸足に体重を乗せてノーステップで広角に弾き返す独特の打法。甲子園での本塁打ゼロに終わったものの、センバツ初戦で大会屈指の好左腕・高橋昂也(花咲徳栄)から逆転の適時二塁打を放ち、敗れた夏の準決勝でも北海に1点差へ詰め寄る執念のダイヤモンド1周(痛烈な右前打が相手失策を呼び打者走者の九鬼は一気に本塁生還を果たす)があった。

 こうした勝負強さと打者としての技術の高さを買われ、U-18アジア選手権でも4番打者に抜擢され優勝に多大な貢献を果たしたのだった。

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