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埼玉西武・雄星が直面する規定投球回との無味乾燥な戦い。未来のエースが果たすべき役割とは

西武の菊池雄星が9月23日の対ソフトバンク戦で、7回途中7失点で敗戦投手になった。クライマックスシリーズ(CS)争いから脱落している中、7点ビハインドで130球を超えても続投したのには理由があった。しかし、そこには「なぜ」が付きまとった。雄星が果たすべき役割とは。

2016/09/26

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雄星がやるべきことは記録なのか、好投なのか

 今季の西武は、まだ誰も規定投球回数に達していない。その事実を伝えるスポーツ報知(9月6日付)の見出しには、「屈辱回避」の文字が踊っている。西武球団創設以来、毎年誰かしらが規定投球イニングを投げてきたからだ。
 
 これを回避できる可能性があるのは、チームに菊池しかいない。だからこそ9月23日のソフトバンク戦では大量失点しながら7回途中まで投げ、今季最終戦となる同28日の日本ハム戦に中4日で先発する予定だ。
 
 そうした自身の使命について、菊池はこう話している。

「チームの歴史の中で、不名誉なことを残したくないです。僕個人というより、チームとしてそういう不名誉なことを残したくないという思いのほうが強い。特にピッチングコーチに対する感謝の気持ちがあるので、そういう意味でも(28日の日本ハム戦では)いいかたちで(規定投球回数に達する)6回を投げられれば」

 2000ページ以上ある『日本プロ野球記録大百科』をめくると、歴史や記録の重みは重々伝わってくる。

 それでも、記録達成のために帳尻を合わせるような出場には賛成できない。本当に中身のある記録を達成してこそ、ファンは心から賞賛を送ると思うからだ。

 今季の西武を振り返ると、下位に沈んだ要因の一つは先発陣の出来にある。誰も規定投球回に名を連ねていないのは、それを最もよく表している「記録」だ。CS出場の可能性がなくなり、消化試合となっているなか、記録のために菊池を投げさせる意味はどれほどあるのだろうか。登板間隔を詰めて投げた結果、もし故障でもしたら取り返しがつかない。

 23日の試合後、菊池の声に耳を傾けていると、疑問が一つ浮かんだ。規定投球回数に達するために投げることを、菊池は本当に望んでいるのか。

 そう思ったのは、「いっぱいいっぱい」という言葉を2度も繰り返したことにある。負けた試合で弱いセリフを吐くのは、少なくともエースに相応しくない。チームの主戦を張る岸孝之なら、負け試合の後、報道陣の前で弱音を口にしないはずだ。

 西武にとって今季最終戦の28日、4年ぶりの優勝を目指す日本ハムが並々ならぬ意気込みでやって来ることはいうまでもない。そうした相手に対し、菊池はどんなピッチングを見せるのだろうか。

 この試合で仮に規定投球回数に達しなかったとしても、菊池が今季見せてきた投球が素晴らしかったことに変わりはない。それはファン、そして首脳陣が誰よりわかっているはずである。

 それでも登板間隔を詰めて規定投球回数を狙いに行く以上、記録達成、そして飛躍の1年となったシーズン最後に相応しい姿を、ライオンズファンの前で見せてほしい。

 エース候補と期待されてきた左腕にとって、それはプロとしての責務だ。

取材協力:氏原英明

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