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埼玉西武・雄星が直面する規定投球回との無味乾燥な戦い。未来のエースが果たすべき役割とは

西武の菊池雄星が9月23日の対ソフトバンク戦で、7回途中7失点で敗戦投手になった。クライマックスシリーズ(CS)争いから脱落している中、7点ビハインドで130球を超えても続投したのには理由があった。しかし、そこには「なぜ」が付きまとった。雄星が果たすべき役割とは。

2016/09/26

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「今日はいっぱいいっぱい」と振り返る雄星の背景にあったもの

 高卒7年目で初めての開幕投手を任された今季、菊池はシーズン初登板から成長した姿を見せた。前年までは失点するとそのまま崩れていく傾向にあったものの、今季は最少失点で踏みとどまってきた。それが、自身初の2ケタ勝利を積み上げることができた理由の一つだった。

 だが、9月23日のソフトバンク戦では粘り強く投げることができなかった。

 今宮に痛恨の2ランを許した直後の4回、1死満塁で細川亨を迎えた場面だ。ストレート2球で2ストライクに追い込んだ後の3球目、捕手の森友哉がホームベース後方で中腰になってウエストすると、真ん中に打ちごろの球となる。ボールから意図が抜け落ち、レフトに手痛いタイムリーを打たれた。

 続く城所はすっぽ抜けたスライダーで運良くタイミングを外し、空振り三振に仕留めた。迎えるのは前打席で本塁打を浴びた今宮だ。

 初球はカーブが外れ、2球目はスライダーでストライク。だが腕の振りが緩く、高めに浮いて冷やっとする1球だった。続く3球目は外角を狙ったストレートを力み、真ん中低めに外れて2ボール、1ストライク。

 次にバッテリーが選択したのが、内角へのスライダーだった。結果球となったこの配球について、森が意図を説明する。

「真っすぐ1本で来るやろうなと思ったので、緩急をつけられるスライダーでいけるかなと思いました」

 一方、「スライダーは納得して投げたのか」と聞かれた菊池は、こう振り返っている。

「そうですね。もう少しカーブを使えば、違ったのかもしれないですけど。今日はいっぱいいっぱいでした」

 そうして投じたスライダーは真ん中寄りに甘く浮き、今宮にレフト線への2点タイムリーを打たれた。

 この日の菊池は生命線のストレートを思うようにコントロールできず、スライダーも抜ける球が多かった。今季躍進の大きな要因となったカーブも、効果的に使えていなかった。

「全体的にカウント負けして、真っすぐ、スライダーを狙われてというかたちだったので、後手後手のピッチングになってしまいました」

 そう振り返った菊池の心の内が、「いっぱいいっぱい」という言葉に表れているように感じられた。

 ではなぜ、ベンチに菊池の心の声は届かなかったのだろうか。もっと端的に言えば、なぜボロボロになっているのに7回途中まで続投させたのか。

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