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ヤクルト逆転CSへの望み。石川&中村「最優秀バッテリー」が見せた意地【新・燕軍戦記#31】

9月13日の横浜DeNA戦に敗れ、自力でのクライマックスシリーズ(CS)進出が消滅した東京ヤクルトスワローズ。その窮地でわずかな望みをつないだのは、昨年のセリーグ最優秀バッテリーに輝いた石川雅規と中村悠平のコンビだった。

2016/09/16

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中村「勝ちを付けることで悔しさをぶつけていけたら」

「こういう崖っぷちに立った時になんとかしてくれるのが石川さんだなと思います。リードしててもすごく感じましたし、こういうところでの気持ちの強さっていうのはスゴいですね」
 この日の石川をそう評したのは、5試合ぶりに先発マスクをかぶった中村悠平(26歳)。彼にもまた意地があった。

 昨年は正捕手としてベストナイン&ゴールデングラブ賞、さらに石川とともに最優秀バッテリー賞も受賞。ところが今シーズンは序盤から精彩を欠き、夏場には投手陣の『炎上』が続いたことで、昨シーズンは揺るぐことのなかった正捕手の座は、2歳下で強気のリードと強打が持ち味の西田明央によって脅かされていった。

 8月2日の広島戦(神宮)、先発の石川が打ち込まれて4対16と大敗した試合後のこと。「ムーチョ(中村の愛称)、悪かったな」と声をかけてきた石川に、中村は「次、頑張りましょう!」と応じたが、「次」はなかなかやってこなかった。

 この日を境に中村と西田の立場は逆転。それまでは一塁での出場が多かった西田が、翌日からは先発マスクをかぶるようになり、これを機に最下位に沈んでいたチームは浮上。8月は西田が捕手で先発した20試合にチームは13勝7敗と大きく勝ち越し、中村の先発出場はわずか4試合にとどまった。

 結局、昨年のセリーグ最優秀バッテリー再結成には、1カ月以上を要した。9月8日のDeNA戦(横浜)、石川は5回途中までに3点を失い降板。中村も3点を追う5回の攻撃で、西田を代打に送られ交代。チームは逆転勝ちを収めたものの、久しぶりのスタメン出場で結果を残すことはできなかった。

 それから6日後。チームが文字通り崖っぷちに立たされたところで巡ってきた、中村にとって今月2度目の先発マスク。しかも、バッテリーを組むのはまたも石川である。
「しばらく(組む機会が)なくて、前回(9月8日に)組んでKOされて……。相手も同じチーム(DeNA)で、なんとかやり返したいなっていう思いがありましたし、僕自身ももう『ひとあがき』したいと思ってました」

 試合前は石川に「初回から攻めていきましょう」とだけ声をかけたというが、プレイボールがかかると息の合ったコンビネーションで好投を引き出した。この1試合でどう評価が変わるかはわからない。それでも中村は前を向く。

「(なかなか試合に出られない)悔しさはありますし、こうして組ませてもらった時に石川さんに勝ちを付けるとか、他のピッチャーでもそうですけど、そういった思いの中で悔しさをぶつけていけたらいいなと思います」

 ヤクルトにとって、今シーズンも残すところあと8試合。仮にこれを全勝しても、DeNAが残り8試合で5勝すれば、CS進出の望みは絶たれる。だが、可能性がある限り、あきらめるわけにはいかない。

「最終戦(9月28日のDeNA戦)で1ゲーム差まで詰まってたら、そこで僕らが勝てば勝率で上回る。そういうところまで持っていけたらいいですね」
 中村が描くシナリオが現実となるかどうか。それは今日からの戦いにかかっている。

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