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「ボール投げ」の能力低下は必然――大谷翔平選手から考える、ジュニア年代に求められる〝アスリート教育〟【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】

読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載。小島氏は現在、(株)K’sLabを立ち上げ、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。今回のテーマは「運動神経とアスリート教育」です。トップアスリートのほとんどがジュニアの時に2、3種類のスポーツをやっていたと言います。複数のスポーツを通じて、多様な動きを子どものうちに身につける重要性を小島氏も痛感しています。

2014/12/13

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 今回のテーマは「運動神経」。昨今、遺伝子学など様々な著書が世間をにぎわせていますが、果たして、アスリートにとって「運動神経」とは、パフォーマンスにどの程度の影響を与えるのだろうか? ジュニア世代の指導実績がある小島圭市氏は、過去の経験の中で、「運動神経」をテーマに練習メニューを組むなど実践を積んできている。

 実際に「運動神経」はどう磨いていくのか。小島氏の理論を聞いてみた。

〝できない〟のではなく、〝やってきていない〟だけ

「運動神経」というのは、お母さんが妊娠して4カ月目くらいからでき始めると言われています。そして、一説には、生まれる頃に約80%(個人差あり)ができあがり、14、5歳くらいに発達が終わります。私は遺伝子学などの本を通じて知りましたが、医学の図式ではそういう論文も発表されています。

「生まれてくるころに運動神経の約80%ができているということは、それから後になって何をしても手遅れなのではないか?と思うかもしれませんが、トップアスリートを形成する要因が、遺伝子などの先天的なものか、環境などの後天性によるものであるのかの考察があって、後者が有力というのが現在のところ多数意見だと言われています。

「約80%の運動神経ができているといっても、生まれた後の環境要因で大きく変えることができるということです。

「私が中学生の指導をしていたときに、逆上がりができない選手がいました。そんな子どもたちが『プロ野球選手になりたい』と言っているのを聞いて、私は『逆上がりができない子にはプロ野球選手にはなれない』という想いにかられましたが、実はそうではなく、彼らは逆上がりをやってきていないからできないだけだということがわかりました。日本の環境がそうさせているだけなのです。

「先日発表された政府の統計で、青少年の体力の数値が軒並み上がったにも関わらず、「ボール投げ」の能力に関しては下がっていました。
「なぜ、そうなるかというのは、町中の公園でボールを投げてはいけないということが、要因の一つであるのではないでしょうか。

ジュニアの頃は、複数のスポーツを経験すべきだ

「運動神経は生まれてから約80%が出来上がっているとお話ししましたが、赤ちゃんの時から運動をさせないで、かごの中に入れていたら、運動はできなくなります。走らせない、鉄棒をやらせない、歩かせもしなければ、何もできなくなってしまいます。子どもにとっての一番最初の運動は、おそらく「はいはい」です。ところが、戦後に核家族化が進んだ日本の家では、「はいはい」する距離が限られ、運動神経の発達が満足にできていないという文献もあります。日本では遊ばせるということをしなくなってきていますから、その影響が少なからずあるのではないでしょうか。
 
「それぞれの競技によって、練習を幼児の頃からしたほうがいいという競技もあると思います。
「しかし、野球は、40歳を過ぎてもプレーすることができるのです。だから、年齢の幼い段階、いわばジュニアの頃から特定の競技に偏ってやらせる必要はないと考えます。17、8歳くらいまでは、2、3種の競技をさせるべきです。トップアスリートのインタビューをした文献には、トップアスリートのほとんどがジュニアの時に2、3種類のスポーツをやっていて、1種類だけの競技しかやっていない選手は一人もいなかったそうです。

「つまり、大事なのはアスリートの養成なのだと私は考えます。
「今、求められているのは、アスリート教育をどうするかということではないでしょうか。

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