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落合博満氏のスカウティング・育成論――“減点法”で決めつけず、小さな可能性にも着目【横尾弘一の野球のミカタ】

アマチュアからプロに入るのは本当にごくわずか。その中からプロで実績を残せる選手はもっとわずかだ。そんな選手をどう発掘し、球界を代表する選手に育てるか。指導者の眼力と指導力が常に問われる。

2016/08/10

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出会った指導者によって選手の運命は決まってしまう

 もちろん、プロの世界に入ってから、新たな特長が見つかることもある。
 
 中日に赤田龍一郎という選手がいる。愛知大から2010年の育成ドラフト2位で入団し、2013年のシーズン途中で支配下登録された捕手だ。同期入団の松井雅人らと切磋琢磨しながら飛躍を目指しているが、現在まで一軍で目立つ実績は残していない。それどころか、歳下の捕手が次々と入団してくるため、今季はファームでファーストもこなしながら奮闘中である。7年目ともなれば、強い危機感を抱いているのは間違いない。
 
 ファームを視察した時、そんな赤田を見た落合GMは、課題とされている打撃面が持ち味になるのではないかと感じたという。
 
「詳しくは言えないけど、ちょっとした修正で赤田のバッティングは見違えるようになった。あとは、実戦でどれだけ結果を残せるか。左の代打で使えるようになれば、可能性も広がるでしょう。そうやって、ひとつずつステップしていく。プロで生き残っていくためには、それしかないでしょう」
 
 投手としての才能を認められながら、なかなか芽が出ず、野手に転向した途端に球界を代表する存在まで上り詰めた糸井嘉男(オリックス)のように、プロ入り後に別の可能性を広げる選手もいる。だからこそ、スカウティングや育成は「バッティングはいいが、あの守備では使えない」や「このストレートの球速ではプロでは厳しい」といった“減点法”で決めつけてしまうのではなく、「あれだけの強肩を生かすことはできないか」、「シュート回転のストレートを武器にできれば」というような、小さな可能性にも着目するべきではないか。
 
 ただでさえ、成功するのが難しい世界である上、入団したチームや出会った指導者で選手の運命は変わってしまう。だからこそ、たったひとつの特長を見極めてやりたい。生まれながらのスターではなく、ファームで苦労して這い上がった落合GMらしいスカウティング・育成論だと感じた。
 
落合博満氏、個人タイトルは「野球人生を変える」。鉄則は『逃げるが勝ち』【横尾弘一の野球のミカタ】

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