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ロッテ・涌井秀章、西武・岸孝之の対決にみた“エースの条件”。渡辺SD「意外とライバル心を持っている」【中島大輔One~この1対1をクローズアップ】

 7月5日のQVCマリンフィールドでは濃密な時間が流れていた。ロッテのエース・涌井、西武のエース・岸が投手戦を展開。その対決にはかつての恩師・渡辺久信SDが語っていたエースとしてのあるべき像を体解しようとする二人の姿があった。

2016/07/11

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負けないことは極めて重要な要素

 1986年生まれの涌井秀章と、1984年生まれの岸孝之。
 
 西武の新旧エースのふたりが7月5日、QVCマリンフィールドで行われたロッテ対西武で初めての直接対決に臨んだ。
 
 ともに多くを語らない両右腕は、互いにどんな意識を燃やし合っているのだろうか。
 
 二人に「スーパーエースになれ」と説いてきた西武の渡辺久信シニアディレクター(SD)が監督時代の2011年、こう話していたことがある。
 
「涌井と岸は意外とライバル心を持っているからね。涌井にしてみたら、ライバルは帆足(和幸=現ソフトバンク打撃投手)じゃないんだよね。(石井)一久でもなく、やっぱり岸。岸にも涌井を抜こうという気持ちはあると思う。ただ、それを表に出さないんだよね。でも、岸は負けず嫌いだよ」
 
 二人の球を最も多く受けてきた捕手の炭谷銀仁朗は、この試合に懸ける両者の意気込みを感じていた。直接対決の2日前には、岸の球を受けたブルペンキャッチャーから「気合が入っていた」という報告を受けている。
 涌井については「もちろん対岸さんという気持ちは感じました。それに、もともと対西武には向かってきますからね」
 
 序盤から互いに引かない投手戦となり、岸が8回128球を投げて1失点の好投を見せれば、涌井は9回117球を投げて1失点。試合の決着がついたのは、二人がマウンドを降りた延長10回だった。
 
 互いに譲らなかった直接対決で、特に注目していたのが、両雄がどんな姿でマウンドを降りるか。そこに着目したのは、渡辺SDが「スーパーエース」の条件として話していたことと関係がある。
 
「スーパーエースは負けてはダメ。勝率を争うスポーツのなかで、スーパーエースはチームに貯金をつくらないといけない。18勝10敗くらいなら単なるエース。スーパーエースはもっと大勝ちするピッチャーにならないといけない」
  
 エースの条件はさまざまあるなか、渡辺SDの指摘するように、負けないことは極めて重要な要素だ。
 
 たとえば同点の場面で、ピンチで走者を還さずに無失点で切り抜ける。たとえ負けていたとしても、最後の投球イニングでは3アウトをしっかりとることもエースには求められる。回の途中でマウンドを降りるのではなく、相手打線を抑える過程でエースらしい姿を見せれば、意気に感じた味方の反撃につながっていくからだ。

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