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プレミア12を引きずる松井裕・増井と技術面が要因の西野――抑え投手受難の2016年【小宮山悟の眼】

2016/06/08

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松井・増井は精神面が不調の要因

 楽天・松井や日本ハム・増井の場合は、技術的な側面ではなく、精神的な問題が不調の要因になっていると思う。昨年行われたプレミア12準決勝の韓国戦で結果を出せなかったことの傷跡が、心に残ったままなのではないか。突然、崩れる姿を見るたびに、いまだにあの試合を引きずっているように映る。

 野球ファンの中には、プロの投手が突然、ストライクがまったく取れない状態に陥ってしまうことを不思議に感じる方もいるのではないか。曲がりなりにも、プロの世界で生きている投手なのだから、本来ならストライクゾーンに投げることなど簡単なはず。では、なぜボールしか投げられなくなってしまうのか。その原因は、ほとんど精神的なものだ。

 簡単に言えば、「打たれちゃいけない」と思って投げればボール。「打てるものなら打ってみろ!」と投げればストライクになる。

 試合の山場や、まさにクローザーが登板する最終盤など、しびれる展開でマウンドにいる投手が、まず思うのは「打たれてしまったらどうしよう」。それが一般的な投手心理だ。だが、裏を返せば打者側だって、「打てなかったらどうしよう」と思っていることになる。どちらが精神的に優位に立ち、勝負の主導権を握るか。プロの投手と打者は、そこでせめぎあいをしているのだ。

「打たれてはいけない」と思ってボールが先行すると、今度はボールを置きに行って痛打されてしまう。だが、「打てるものなら打ってみろ」と思って投げた場合、抑えればもちろん自信になるし、たとえ打たれた結果になったとしても、「相手が上だった」と素直に認めることができる。その時は、その敗れた相手を徹底的に研究し、次の勝負で勝てるよう努力すればいい。プロの投手とは、そうやって成長していくものだ。

「打たれてはいけない」から「打てるものなら打ってみろ」に、どうやって意識変革するのか。その方法は、経験を積むしかない。そして、その舞台が大きければ大きいほど――たとえばシーズン終盤の首位攻防戦や、クライマックスシリーズ、日本シリーズなど。しかも、その試合でピンチの場面で強打者を打席に迎えたときなど――経験値として得る見返りは大きい。言い換えれば、二軍の試合でどんなに相手を抑え込んでも経験値は上がらない。

 断っておくが、小久保監督が彼らを起用した采配を批判しているわけではない。監督の期待に応えられなかったのは彼らだし、彼ら自身も、そういう自分を悔しがっているからこそ、吹っ切れていないように見えるのだろう。

「俺の野球人生に、あの時以上の出来事なんて起こるはずはないさ!」

 彼らがそう思えるようになったとき、プレミア12での経験が、初めて糧になるのだと思う。

 抑えるのが当たり前。打たれた登板だけニュースになる。クローザーとは、そういう損な役回りだ。しかし、だからこそ、やりがいもあるし、選ばれた投手にしか務まらないポジションでもある。

 野球の試合では、相手から27個目のアウトを奪うのが一番難しいのだ。

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小宮山悟(こみやま・さとる)

1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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