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球界の巧打者が明かす四球論と野球の妙味。角中勝也と栗山巧、ともに四球は「狙って取りにいかず」

今季は開幕序盤から柳田や秋山の四球数の多さがクローズアップされた。しかし四球数が多いことが必ずしもプラスに働くとは限らないようだ。

2016/05/16

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ボールを見極めた結果の四球

 そして、もうひとり、四球の多さで忘れられない選手がいる。
 西武のキャプテンを務める栗山巧だ。
 
 彼こそ、球界トップクラスの“四球王”といえる。2010年からの四球数は6年連続してリーグ10位以内に入っている。その数は2010年から70、73、53、99、96、72といった具合で、2012年を除けば、すべて「リーグ3位以内」と驚異的ですらある。角中と同じように、2013年には四球の数が三振数を上回る成績も残している。
 
 栗山は四球の多さをどう捉えているのか。
 
「答えが難しいっすね。僕は600打席近く立っていますからね、それが多いのかどうかっていうと難しいところはあります。でも、どうなんやろ。ボールを見極めていた中で、結果的に四球を『取れちゃってる』という表現のほうがいいのかな。今は、四球を取ろうという気持ちがあるんじゃなくて、打ちたいボールを選んでいるうちに、取れちゃってるんですよね」
 
 栗山の四球数が急激に増えたのは、最多安打のタイトルを獲った翌々年の2010年からだ。本人によると、この年だけは、極端なまでに「三振と四球数」に意識を持ったという。三振を減らし、四球を多くとることを目指したところ、前年から30個近く四球数が増えた。それ以後、自然と四球がついてきている。
 
「正直ね、野球に四球なんているんかなって時々思うんですよ。もちろん、必要なんですよ。ビッグイニングを作るためには四球が絡まんとできへんやろしね。ストライクゾーンで勝負してきてくれるなら、そこで勝負したいというのはあります。基本的には、相手投手のコントロールがいいかどうかは関係なく、四球は取れる。コツがあるわけではないけど、簡単に言えば、打てるコースを打っているだけ。シーズン中は、自分の体がいろんな状態になるわけじゃないですか。今はこの球が打てるけど、ある時期はこっちの球なら打てる。それを自分の中で意識してボールを選んでいっている。それを繰り返している中で、70、80の四球になっている」
 
 とはいえ、栗山も今の数字に納得しているわけではない。昨年は72個の四球数を誇ったが、出塁率は13位に落ちたし、打率.268は低調な数字といえる。「まだまだ選手として成長していかないといけない」と語る栗山にとって、このまま終わるわけにはいかないのだ。
 
「去年のようなシーズンにはしたくない。率もそうやし、全体的な数字、チームとしての成績もそう。具体的に取り組んでいることについてはいわれへんけど、打席での取り組み方一つ、後悔のないようにと思っています。今のところは、いい感じには来ていますけど、でも、これからは傾向がバレてくるし、同じようにはいかへんはずやから。シーズン中にレベルアップしていって、いいシーズンにしたいと思います」
 
 15日の日本ハム戦。
 栗山は2打数2安打3四球の5打席連続出塁をマーク。相手エース・大谷翔平をKOする立役者になった。打つところ、選ぶところを見極めることのできる打者として存在感を示している。
 
 角中、栗山の二人は四球の価値を否定しない。「ランナーなしの場面でシングルヒットを打つくらいなら、四球を選んだほうが相手ピッチャーは嫌なはず」と角中はいうし、栗山は「試合の中で1個の四球をとるとね、後の打席が楽になる」と表にはみえない意義があると語る。
 
 四球数の多さ(出塁率)は打者の能力の高さを示すファクターになっているのは紛れもない事実だ。だが、柳田の今季の成績の変遷からチームが勝ち始めたように、四球を取るべき選手、打つべき選手が、どの選手であるかは、個人、チームとしても意識しなければ勝利にはつながってこないだろう。
 
 四球に隠れる野球の妙味。
 その深さを知ることが、試合を制するカギになる。

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