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大場翔太の気迫に見る中日の成熟ぶり。復活目指すかつてのドラ1が若竜戦士の刺激に

ホークス8年間で通算15勝。ドラフト1位として大活躍はできなかった。今年からドラゴンズでプレーする大場翔太は、復活に向けて一歩ずつ前に進んでいる。

2016/05/12

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グランドスラム



大場が見せた気迫

 この大会で小笠原道大二軍監督は、勝敗を度外視して登板機会の少ない投手を積極的に起用する。3試合あるリーグ戦の先発は、左ヒジ痛からの復帰を睨むラウル・バルデス、昨年のドラフト1位・野村亮介、ルーキーの佐藤 優。そして、社会人が相手でも力を出し切ろうとする選手たちが首尾よく白星を重ね、3連勝で決勝トーナメントに進出すると、準決勝を西川健太郎に任せ、決勝に大場を起用する。

 初回の投球練習から、このマウンドにかける大場の気迫は十分に伝わってきた。ストレートは、コンスタントに140キロ台中盤を叩き出すが、ボールは暴れてカウントが整わない。また、カットボールやシュートは抜け気味で、2回裏にはNTT東日本に1点を先制されてしまう。

 それでも、気迫と集中力は失わない。4回表に遠藤一星が同点弾を放つと、もう1点も許さないという気持ちがひしひしと伝わってくるマウンドさばきを見せた。

「失ったものや忘れかけたことは、階段を上るように一つひとつ思い出していくしかない。先発として5回を投げたことで、今日は一段階上に行けたな」

 落合GMはそう評価したが、大場は6回もマウンドに登ると、強烈なライナーを右腕に受けてしまう。トレーナーに付き添われてダグアウトに消え、山本雅士が投球練習を始めた時だ。大場は何事もなかったようにマウンドへ向かった。

右腕に打球が直撃する

「おいおい、今日は終わりや」

 そう高山郁夫コーチに言われても、「行けます」と返す大場。背中を叩かれて再びダグアウトに消える時には、何とも言えない表情を見せた。

 大場が姿を消しても、グラウンドに漂う熱――。

 このあと登板した山本、祖父江大輔は得点を与えず、9回表に勝ち越しの1点を奪うと、その裏は金子 丈がきっちりと締めた。

 プロ野球の記録には残らない、ましてや大場に白星もつかない試合。それでも、大場の気持ちを無駄にしたくないという選手たちの姿勢が呼び込んだ勝利に、今季の中日の成熟ぶりが見て取れた。

 この大会に出場したアンダーソン・エルナンデス、金子、バルデス、佐藤が次々と一軍へ呼ばれ、5月6日からの巨人戦では10年ぶりに東京ドーム3連勝で首位に躍り出た。もちろん、この時期の順位は関係ないが、首位がいいに決まっている。ドラスティックに世代交代の舵を切ったチームが、正真正銘の“昇竜”になるか楽しみだ。

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