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『1軍めざし、1球にすべてを懸ける』DeNA白根、育成選手としての苦悩を乗り越え再出発

昨年トライアウトを受けた選手の中で注目を集めたのが白根尚貴だった。ホークスから育成選手として再契約の打診があったがそれを断り、あえて厳しい選択を選んだ。そして、ベイスターズで支配下選手としての契約を勝ち取った今、白根は何を思うのか。

2016/02/12

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どんな形でもいい、結果を残す

 昨今の育成選手への契約の在り方は厳しすぎるのかもしれない。
 
 もともと育成制度は2軍選手としての実力がない選手であるけれど、将来的には可能性がみえる選手という側面があった。企業を母体とした社会人野球のチーム数が減少し、プロ野球が受け皿の役を担うというのもある。
 
 つまり、育成選手から支配下選手登録の境界線というは、今すぐに1軍で活躍できるか否かではなく、2軍選手ほどの力をつけたかどうかで認められるかであるはずだ。
 しかし、現状はそうなっているとはいいがたい。白根が昨季のジュニアオールスターに育成選手ながらに選ばれているという事実(ゲームは雨のために中止)は、育成制度の意義を分からなくさせているといえるのではないだろうか。
 
「支配下選手と同じ成績を残しても…」という上記の白根の発言は、育成選手の苦悩を代弁したようなものだろう。ややもすると、白根以外にもそう思っている選手がいてもおかしくはない。
 
「僕のように、育成契約を蹴ってトライアウトを受けようとした人は過去にいたみたいですけど、なかなかできないと思います。僕はホークスにたくさんの育成選手がいて、しっかりと評価してもらえているのかが分からなかった。退団を申し出たときに、ホークスは引き留めてはくれました。でも、それは育成選手として引き留めてくれただけでした。つまり、評価はされていないんですよ。だったら、思い切ってみようと思ったんです」
 
 白根は育成選手として選手寿命をほんの少し延命させるより「自分で勝ち取る人生」に意味を見出した。
 勇気を振り絞って踏み出した人生、そんな彼にはエールを送りたくなる。
 
「こうやって支配下選手として登録してもらえたから、すぐに1軍に呼んでもらうことができたんだと思う。今の自分は『もう、明日は野球ができなくなるかもしれない』『次の1打席で自分の野球人生が終わってもいい』、そんな気持ちで野球をしています。1球、1打席にすべてを懸けています。開幕1軍を理想にしながら、1軍の公式戦の打席に立ちたい。これから紅白戦やオープン戦でチャンスも増えてくると思うので、どれだけ不細工な形でもいいので、結果を残したい」
 
 今の白根に「山陰のジャイアン」の面影はない。
 しかし、やんちゃで横柄な態度が目立っていたあの時よりも、眼光は鋭く、そして、輝いている。

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