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「あのときから片りんあった」――新ミスター・スワローズ誕生! 青木から山田に直接継承された背番号1【新・燕軍戦記#19】

背番号1──。東京ヤクルトスワローズにとって、それは特別な意味を持つ。若松勉を皮切りに池山隆寛、岩村明憲、青木宣親と、歴代の『ミスター・スワローズ』が継承してきた背番号だからだ。青木のメジャー移籍以来、空席となっていたその栄光の1番を受け継ぐ選手が、ついに現れた。

2015/12/09

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菊田康彦



新旧23番&1番、青木と山田の『縁』

 青木と山田──。この2人には不思議な縁を感じる。2011年、青木にとってヤクルトでのラストイヤーとなった年にドラフト1位で入団したのが山田なら、その山田に最初に与えられた背番号が、青木が入団以来6年間着けた23番。結果的に2人が唯一、同じユニフォームでプレーしたこのシーズン、高卒1年目の山田は二軍暮らしに終始し、青木との『共演』は実現しないまま終わる……はずだった。

 ところが邂逅は不意に訪れる。シーズン2位のヤクルトがクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで巨人を下し、中日の本拠地ナゴヤドームに乗り込んだCSファイナルステージ。その大舞台に、当時の小川淳司監督(現シニアディレクター)がまだ一軍経験のなかった山田を招集したのだ。

「あの時は毎日、一緒に食事してましたからね。縁があったのかなって……」

 青木は当時をそう振り返る。初めて一軍でプレーする山田の緊張を少しでもほぐそうと、遠征先の名古屋で毎晩、食事に連れ出していたのだという。

 ただし、山田は並の高卒ルーキーではなかった。まだ19歳ながら、城石憲之内野守備走塁コーチ(現北海道日本ハム打撃コーチ)を通じ、小川監督にスタメン出場を直訴。一番・遊撃で初めてスタメンに名を連ねた第2戦は4タコに終わったものの、第3戦では5回に四球で出塁し、三番・青木の適時打で『プロ初得点』を記録した。さらに第4戦では『プロ初安打』を含む2安打、1打点をマークした。

「今思えば高卒1年目でね、ケガ人が出てチャンスが巡ってきたとはいえ、普通はスタメンで出られないですから。だから、その時から(才能の)片りんみたいなものがあったのかなって」

 青木が言うその才能の「片りん」は、ここ2年で大きく花開いた。今年は過去に9人しか達成したことのないトリプルスリーをやってのけ、史上初めて本塁打王と盗塁王を同一シーズンに獲得。当然のようにMVPに選ばれ、高卒野手としてはイチロー(当時オリックス、現MLBマーリンズ)、松井秀喜(当時巨人)に並ぶ、5年目オフでの年俸2億円に到達した。

 新たに継承する背番号1に「偉大な方が着けてきた背番号なのでプレッシャーもかかりますけど、そのプレッシャーに負けないように来年からも頑張りたいと思います」と話す山田に対し、青木は「ずっと中心選手が着けてきた番号ですから、プレーだけじゃなく人間的なところでもチームを引っ張っていってほしい。この背番号1を背負って、日本一になってほしいと思います」とエールを送る。

 もちろん山田もそのつもりだ。来シーズン、個人の目標として掲げているのは「過去に2度達成した人はいないって聞いたんで、自分が初めて2度達成できるように」というトリプルスリーだが、チームとしては「今年と同様に優勝して、(今年は)日本一になれなかったんで、日本一になれたら」。

 ミスター・スワローズの象徴である栄光の1番を背負い、今年は届かなかった頂に挑む。
(文中敬称略)

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