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苦しい先発陣を支えた菊池保則、第3の球種が飛躍の要因【2015年ブレイク選手・楽天】

最下位に終わり、梨田新監督を迎え再起を図る楽天。苦しい1年の中でも、投手陣には明るい光も見えた。

2015/12/08

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フォークの存在が投球の幅を広げる結果に

 転機は昨年だ。夏場以降ローテーションに定着すると、先発8戦でQS率75.0%をマーク。自慢の速球とスライダーを主体にしたピッチングで自己最多4勝を挙げた。今年はローテーションを1年ほぼ守り抜き、18試合17先発103回を投げて防御率3.76、4勝5敗。援護に恵まれなかったことで白星こそ前年と同じだが、投球回は前年51.1回から倍増した。先発した17試合で責任投球回もたずに降板したのが2試合、5回以上3失点が11試合、よくゲームを作ったのだ。

 第3の球種フォークの存在こそ、ブレイクの要因と言えそうだ。昨年10.9%から今年は17.7%へ。その割合が大きく変わったのだ。スコアリングポジションに走者を背負った時もフォークの割合は昨年13.2%から今年23.9%に増加した。
 第3の球種として精度、安定感が増し、本人も自信を持って投げることができたのだ。

若林様1204表1

 象徴となるゲームを紹介しよう。
 6月21日ロッテ戦だ。今季初の同一カード敵地3連勝をかけた3連戦の最終戦、大久保監督が先発を任せたのが菊池だった。ゲームは序盤2回までに3点を先制した楽天が主導権を握る。菊池は7回4安打無失点。得点圏で相手打者4人と対戦した菊池は「走者を出しても点を与えない意識で投げた」。1回2死3塁・4番クルーズの空三振、3回2死1,2塁・田村の遊ゴロ、5回2死3塁・3番角中の二ゴロ、いずれも低めのフォークで退け、ホーム生還を許さない。菊池の好投が大きかった楽天は試合終了後にソフトバンクを抜き、防御率リーグ1位に輝いた。チームが今季最多貯金2を作ったのも、菊池が3勝目を挙げたこのゲームである。

 もう1つエピソードを紹介したい。9月2日オリックス戦だ。
 味方が逆転した直後1点リードの6回、無死満塁のピンチを招き、打席には5番・中島裕之を迎えていた。ここでマスクをかぶる嶋は菊池にフォーク4連投のサインを初めて出す。見逃しストライク、空振り、ボール。1-2となった直後の第4球目もフォーク。結局、低めに投げきれずに失投をセンター前へ弾き返されてしまったシーンだ。
 実はこれまで1軍でフォーク4連投の経験はなく、多くのファンが嶋の配球に疑問を持つ場面になったが、個人的には逆に菊池のフォークが正捕手に認められ、投手としての階段をまた一段登った、まさにその瞬間に映ったのだった。

 先月14日、球団事務所で700万円増の推定年俸1900万円で契約を終えた菊池は、来季の目標に規定投球回到達を掲げた。
 速球、スライダーに今年手応えを掴んだフォークを武器に、「則本に負けないような右の先発になってほしい」という球団の期待に応える好活躍を来季も期待したい。

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