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「チャンスをつかめる環境を用意」戦力をだぶつかせず、選手の良さを引き出す工藤采配の真髄【小宮山悟の眼】

豊富な戦力を適材適所で活用する。簡単なようで難しい。それを就任1年目、ソフトバンクの工藤公康監督は見事に体現した。

2015/11/05

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ベースボールチャンネル編集部



世界一の球団へ、着実に歩みを進めるホークス

 ソフトバンクが4勝目を挙げた10月29日の神宮球場。優勝を決めた直後に、孫正義オーナーが万歳をしながらグラウンドに入ってきて、選手たちと共に喜ぶ姿は印象的だった。オーナーのチームに対する愛情があふれていたあの光景は、他の11球団のうらやむようなシーンを見せつけた瞬間でもあった。ソフトバンクの選手を含めたすべてのチーム関係者が、「このチームに関わってよかったな」と思ったことだろう。

 ソフトバンクはシーズンを通して突出していた。
 ただ、この強さは一軍選手の能力やベンチワークといった現場の頑張りだけで成り立っているのではない。卓越したスカウティング力。三軍まで整備された育成力。そういう要素も土台となって支えているのだ。

 もちろん、それはスタッフやシステムというソフト面だけでない。
 ファームの施設など、ハード面にも話は及ぶ。もうこうなってくると、親会社の規模にも関わってくる問題なので、他の11球団が、簡単に埋められるような差ではなくなってきていると言えよう。

 2005年に福岡ソフトバンクホークスが誕生し、孫オーナーが王さんを招へい。「世界一の球団へ」というスローガンを掲げた。その王監督から、秋山監督、そして現在の工藤監督へと、その意識は連綿と受け継がれている。お世辞ではなく、チーム内の連帯感、球団としての成熟度など、V9を達成した当時のジャイアンツの域に迫っているのではないだろうか。

 この土壌がある限り、ソフトバンクの黄金時代は続くだろう。

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小宮山悟(こみやま・さとる)

1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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