大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



【2022楽天・戦力分析】戦力整備と高齢化が同時進行。衰退期を迎える前に優勝できるか

2022/03/19

text By

photo

DELTA・竹下弘道



4.今季の選手供給の見込みは?

 ここまでに論じた補強ポイントを踏まえて、楽天が新しい選手をどれだけ用意できるかを見ていきたい。一軍に選手を供給する手段は、①二軍から選手を引き上げる、②ドラフトで獲得する、③国内外の他チームから獲得する、の3つだけだ。それぞれの手段について、どのような選手供給が見込まれるかを見ていこう。
 
 まずは二軍だ。二軍において得失点差への寄与が優れる選手は、一軍でも得失点差を改善する見込みが強いと言える。ここでは2021年の二軍において、各選手が得失点差に何点分の寄与をもたらしたかを調べた[4](図5)。グラフは縦軸が得失点差への寄与、横軸が年齢を表しており、優秀でなおかつ若い左上の選手は将来的な一軍定着を期待しやすい。
 

 
 補強ポイントの捕手・右翼手・指名打者を見ると、20歳の武藤敦貴と24歳の堀内謙伍とが好成績を残している。今季中のレギュラー獲得はまだ難しいと見るが、二軍から選手を送り出すとすれば彼らが有力候補となりそうだ。
 
 武藤は中堅手と左翼手で良好な守備指標UZRをマークしており、右翼手でも守備でプラスを稼げる可能性がある。一方、打撃は選球眼とコンタクトに優れるものの、まだ二軍でも本塁打を記録したことがなくパワー不足が課題と言える。一定の打力が求められる右翼でレギュラーを獲得するには、長打力の向上がポイントとなりそうだ。
 
 堀内も武藤と打撃スタイルが似ており、選球眼とコンタクトに優れるため捕手としては出塁率が高いのが特徴。タイプとしては先輩の嶋基宏(現ヤクルト)に近いかもしれない。ただ、堀内もパワー不足が課題となっており、一軍定着に向けてはその改善が求められる。

 次はドラフトを見ていこう(図6)。育成契約の選手が1年目から戦力になるケースは稀なので、支配下契約の選手のみを見ていきたい。
 

 
 ドラフトでは上位で高校生を多く獲得しており、今季中ではなく長期的な底上げを重視した指名となっている。1位の吉野創士、3位の前田銀治はともに外野手で、長期的な外野陣の拡充に向けて一定の道筋をつけたかたちとなった。
 
 一方、短期的な底上げとしては2位で捕手の安田悠馬を獲得している。大学・社会人卒の捕手では12球団で最上位の指名であり、補強ポイントに有望な人材を確保できた格好だ。捕手の底上げはこの安田にかかる期待が大きい。
 
 最後に補強を確認する(図7)。こちらも育成契約の選手が1年目から戦力になるケースは稀なので、支配下契約の選手だけを見ていく。
 

 
 補強は外国人枠を使って一塁手のクリス・ギッテンス、外野手のホセ・マルモレホスを獲得。さらに自由契約となった外野手の西川遥輝、二塁手の川島慶三を獲得している。
 
 補強ポイントへの動きという観点で見ると、ギッテンスはニーズの高かった指名打者に常駐できる打撃型選手、マルモレホスと西川は右翼手レギュラー候補に相当する。補強の難しいポジションの捕手を除けば、方向性としては万全の対策が打てたと言える。
 
 西川は2020年までは外野手として大幅なプラスを計上していた選手である。当時の水準まで復調できれば、右翼手を強みに転換させられる可能性もあるだろう。また、昨季の楽天は外国人野手がほとんど機能していなかったため、ギッテンスとマルモレホスが機能すれば大きな上積みが見込める。彼らにかかる期待は大きいと言える。

1 2 3 4 5